RECORD

Eno.223 宇迦盧 司の記録

変化

俺は多分、周りが思っているよりは特別な存在だ。
しかしどうやら、自分で思っているよりは平凡な存在だったらしい。
そんなことを、さきほど受けた説明を振り返りながら考える。
つまり"神秘"というのは思いの外、あちこちに転がっているって事実を。

"神秘"に係る人間は、話を聞く限り大勢存在していて。
そもそもこの北摩の街は、そんな"神秘"の研究が盛んな街だと聞かされた。
俺が産まれてきてからずっと過ごしてきたこの故郷の、知られざる側面だ。

「まぁ、でも。そんなもんだよな」


けれど、考えてみればそれは当たり前の話だった気がする。
今は情報化社会の真っ只中、こんな若者ですら世界の広さを実感できる。
この何十億という人が犇めき合う星の中で、自分や自分の家だけが特別だなんて。
改めて口にしてみれば、なんだか夢見がちな子供みたいだった。

「はぁー……やめよ。いつまでも引き摺るな司。切り替えて次のこと考えろ」


自覚すれば、少しだけ笑いたくなった。
子供の頃にきっと誰もが感じる"自分が特別な存在である"という錯覚。
それがまやかしだと気づけたのはきっと、俺にとって良いことだ。
だから抱いてしまった羞恥と一緒に、頭から追いやろう。

「次は学生窓口だっけ……どこにしたって市役所より気は楽だろうけど」


立ち止まれば、きっと他にも色んな考えが湧いてくる。だから今は足を動かすことにした。
大学生なんて、ただでさえやろうと思えばやれる事は沢山ある。
忙しくする中できっと、これから変わっていく日々にも慣れていくはずだと。

目の前に広がる街並みが"表"であるという実感を、肌で感じながら歩き出した。