RECORD
Eno.77 磯向井 利慕の記録
❖回想録
物心ついた頃には、既に父親はいなかった。母が「ごめんね」と言っては、慌ただしく引っ越しを何度もした。
幼稚園、保育所。家が変わる度、会う人見る人も全く異なり、自分は事情も分からずそれが当たり前の日々を過ごしていた。

それは確か、いつも周りに子分を連れた気の強い女の子だった気がする。
戸惑い、言葉を選んでいると、保育士の人が飛んできて自分と女の子の間に割り込んできた。

それが逆に、自分の父親が本当にそういう人だったと裏付けているようだった。
子である自分が父親の事を何も知らないのに、周りの方がよく知っている。
それが不気味で、不安で。調べ方も分からず大人に父親の事を尋ねるも、何も教えて貰えない。


皆、似たような話ばかりする。聞きたいのは、どこにいるかではなく、何をしたかなのに。
だから、敢えて自分はその気の強い女の子に尋ねてみた。
バカにされるのは承知の上。だからこそ、答えてくれると思った。

それだけだった。
幼稚園、保育所。家が変わる度、会う人見る人も全く異なり、自分は事情も分からずそれが当たり前の日々を過ごしていた。

「リシタ君のパパって、悪いことしたって本当?」
それは確か、いつも周りに子分を連れた気の強い女の子だった気がする。
戸惑い、言葉を選んでいると、保育士の人が飛んできて自分と女の子の間に割り込んできた。

「そういう事を聞いてはいけないよ」
それが逆に、自分の父親が本当にそういう人だったと裏付けているようだった。
子である自分が父親の事を何も知らないのに、周りの方がよく知っている。
それが不気味で、不安で。調べ方も分からず大人に父親の事を尋ねるも、何も教えて貰えない。

「リシタ君のパパは、海に消えてしまったんだよ」

「リシタ君のお父さんは、お空に居て見守ってくれてるんだよ」
皆、似たような話ばかりする。聞きたいのは、どこにいるかではなく、何をしたかなのに。
だから、敢えて自分はその気の強い女の子に尋ねてみた。
バカにされるのは承知の上。だからこそ、答えてくれると思った。

「ママがさ、リシタ君に関わんない方がいいよって」
それだけだった。