RECORD

Eno.424 甘露 進の記録

地に足を付けて歩く日に

電車に揺られている。
運良く2人分空いていた席。
その隣で、兄貴…繋がウトウトとしている。

…っつーか、ほとんど寝てる。

(オレだって眠てえんだけどなぁ……)



今はまだ目的の駅まで数駅あるし、
無理に起こさなくて良いや、と
ワイヤレスイヤホンを耳に。

勝手に流れてくる「おすすめの動画」は、
何処ぞの廃病院に懐中電灯一つ。
恐ろしいものを探して、あたかも恐ろしそうに歩いていた。

「信じてないくせに」

電車に揺られる音で聞こえないくらいの声が、
小さく喉の奥から鳴る。
その動画はオレの賛美眼からすりゃ、
ちょっとわざとらしすぎた。
何だかバカらしくなってスマホを閉じて、
北摩市のまだ見慣れない流れる景色を見る方に変える。


(この世界にある不思議なものが
『神秘』って定義されるんなら)



オレと繋は、生まれた時から不思議なチカラがあった。
それは誰かがいつの間にか、『異能』と呼んでいた。

そしてずっとそばにいた筈のチカラはいつの間にか、
ずいぶんと小さくなっていた。

(オバケだって、オレのチカラだって、)



オレはそれがすごく寂しくて、悔しくて。

「進はすぐに物を失くすよな」
「進くん、また壊したの?」


って言われるたびに、
このチカラが薄れていくのが分かって。
どんなにこの世界に不要なチカラだったとしても、
オレにとっては唯一無二だったから。

だから悔しくて悔しくてしょうがなかったこの頃に、
北摩市で飛び込んできたのが『神秘』の話だった。

(嘘じゃないんだ。
存在を許されたって、いいはずなんだ)




神秘が溢れてしまわないように。
神秘が溢れて無くなってしまわないように。
たったそれだけで、この繋がりを守れるんなら。
破格の契約だ。そう思った。


─次は、 次は、  


そんな事を考えていたら、
降りるぞ、次降りるぞという気持ちをすっ飛ばして、
もう到着駅が近づいていた。

兄貴はオレじゃない隣の誰かに頭を預けそうになりながら、すっかり寝入っている。
しょうがねえ、起こしてやるか。

「おい、兄貴」