RECORD

Eno.230 田中 二郎の記録

再会

突如迷い込んだ『裏世界』、『神秘』に関わる人間。
自分もその一人となったのだと告げられた。
なんとなくそんな気はしていたのだ、少し不安はあるけれど、わくわくもしている。

「二郎、さぶちゃん覚えてる?」

翌日、母にそう問われた。



小さい頃、よくうちに遊びに来てくれたお兄さん。
綺麗な長髪で、いつも笑顔な優しい人だった。
彼はいつも同じ菓子折りを持って来ていて、俺はその中に入っている薄いクッキーが好きだった。
まあこれは思い出補正というか、彼が好きだから彼の持って来たお菓子が好きだった、という単純な理由である。

彼と最後に会ったのは、約十年前。
ランドセルを買って貰ったきりだ。

「嘗てこの地を頻繁に訪ねし者……忘れる筈も無い。」
「すっごく懐いてたものねえ。
 久し振りにうち来るみたいだから、次のお休みは空けといてね。
 なんか二郎に大事な話があるって。」
「えっ?」

急展開に次ぐ急展開である。
俺は神秘に触れた選ばれし者、そして旧き友(と言って良いのか判断に迷うが)との再会……物語が動き出す。
元々予定なんて無かったから、週末が楽しみだ。

──

いつもはあっという間の一週間。
今週だけは長かった。
それでも待ちに待った週末だ。
楽しみにしていた再会の時だ。



十年経った『さぶちゃん』は、髪が短くなっていた。
ちょっとショック。
しかしそれ以外はほぼあの頃のままだ。
思えば俺は、彼のことを何も知らない。
そもそも彼は何歳なんだろう。

「じろちゃんおっきくなったねえ、2mくらい?あ、これお菓子食べてねえ。」

彼は変わらぬ笑顔で菓子折りを差し出す。
十年前と同じ菓子折りを。
十年前と違うのは、そこに名刺が添えられていること。

神秘管理局 研究課
佐武 海


俺はここで初めて彼の名を知った。
俺はここで初めて彼の職を知った。
神秘が俺達を再会させたのだ。
俺の半身が『裏世界』へと俺を誘ったように。

「──というわけで、これから僕がじろちゃんの護衛とか色々やることになりました。
 年頃の子におじさんと行動しろって言うのは酷かもだけど……」
「いや、構わない。
 これもまた運命……よろしく頼む、《知識の潜海者サブマリン》。」
「なんて?」

時は来た。
俺は†双刻の半身†、真名を田中二郎。
《知識の潜海者》と共に神秘を解き明かし、喪われし半身へと至る者。