RECORD

Eno.60 千夜 理央の記録

その牙は矛に、爪はやがて拳に

幼い頃、下の弟妹で喧嘩があり。
まだ若かった俺は、つい手足が出て喧嘩を治めたことがあった。
その後当然のようにしばらく怖がられ口すら聞いてもらえずショックを受けたもので、
それ以降むやみやたらと拳や蹴りを振るうことはしたくないと考えたものだ。

元々背が高く、母親譲りのやや地黒肌で陸上部。
目立つ風貌ではあったから喧嘩腰になられることがあったが全て無視を決め込んで。
それでも絡んできたり無理矢理ぶん殴る相手には仕方なく習った護身術で応対。
鍛えるのは好きだったし体格にも恵まれて腕っぷしまで無駄に強くなり。
「孤高ぶってる奴がいる」と噂され負のループに陥った時にうんざりして、
「言ったらどうなるか」と脅されていたが我慢ならなくなり先生に言えば。
幸いきっちり対応してくれる大人であったが故かその後はしばらく睨まれる程度で済んだ。
俺もこってり絞られたが、同時に「よく勇気を出して言ってくれたな」と
しっかりと目を見ていってくれたことを覚えている。
ああいう大人になりたい。その時の先生を見てそう思えた。

その後は高校まで地味に過ごし無難な格好で溶け込んで、背丈と肌はごまかせずとも。
高校は家の手伝いで帰宅部だったから尚更目立つこともなく生きてきた。
趣味で鍛えていた体とついでに鍛えた腕っぷしもキレを増していき。
それは一度俺の実家に侵入してきた強盗相手に真価を発揮してしまったがために
一生モノの付き合いになりそうだと実感してしまったわけだ。
今後も家族を、または何かしらを俺自身が守る可能性が出てしまったが故。
…無駄に振るうことは今後もしないし、出来ることなら今後もしたくない、そう思っていた。


一通りのガイダンスを受け改めて一考する。
俺の基本的な在り方は治療担当メディック、それは変わらない。
自分の『神秘』を最も活用でき皆への支援も出来る役割はこれだと思っている。
あともうひとつは受講しておけると伺ったがこれを迷い。
白虎牙砲を活かせそうな狙撃手シューター。超能力を活かせる魔術師マジシャン

散々悩んだ末、まずは研究課のドアを叩き白虎牙砲のバージョンアップを依頼。
その間に。

「先日はお世話になりました、改めてご指導お願いします」



牙をより磨くため、攻撃手ファイターの学科を受講することとなる。
「戦場の皆」という守るものが出来たからには爪を研ぐのも躊躇う必要はないだろう?