RECORD

Eno.623 飯田飯太の記録

神秘レベル5[ワクワク”裏世界”探索]

走る。
ひたすらに走る。

「はぁ、はぁ…面白いな…ココは。とはいえこれはキツイかも」


襲い来る怪奇から逃げ回りながら、手元のPDAを操作する。

造るモノシェフの力を使い、改造ドローンから周辺にジャミングをばらまく。
怪奇からの攻撃が逸れるが、足に掠る。

「ぐっ…。しくった!」


つんのめって地面に転がる。迫る怪奇の数は二体。

PDAをもう一度操作して、攻撃を行う。
近くに浮かぶドローンから生み出されるのは二発の弾丸。的確に怪奇に命中すると、内部に浸食して怪奇の構造を解析していく。

怪奇にとって構造を解析されることは、それ自体が神秘率を下げる毒のようなものであるが、浸食した弾丸はさらにその構造を改変して蝕んでいく。

しかし、怪奇を殺しきるには時間が足りない。二体の怪奇の攻撃がもう一度迫る。
両方の攻撃は避けきれない、しかしただ攻撃を受けるわけにはいかない。
PDAを怪奇の一体に叩きつける。

カウンター気味に入った一撃はそのまま怪奇を消滅させる。
しかし、もう一体の攻撃ががら空きの胴体に直撃する。壁へと吹き飛ばされて叩きつけられる。肺の空気が吐き出され、息ができない。

「がはっ…!!けほっ…」


”我が半身よ、勝手に回復させるぞ。”
造るモノシェフが入ったドローンが近づき思念を届けてくる。
…ああ、頼む。

最後の一体が迫ってくる。
呼吸するたびに痛みで意識が曖昧になる。あばらが何本か折れているようだ。
ゆっくりと振り上げられた拳が、勢いよく振り下ろされる。

PDAで頭部を守る。

怪奇の拳がPDAに叩きつけられる寸前で、怪奇が消滅する。弾丸による毒が間に合ったようだ。

「ふう、危なかった…」


回復が済んだのか、あばらの痛みが消えていく。

ひとまず、このあたりの安全は確保した。探索に戻ることにしよう。
ドローンを周りに展開させて、地形の調査や戦利品の回収を行う。


「そういえば、そろそろ悲願の内容を教えられない理由を話してくれてもいいんじゃないか?」


PDAで、ドローンから送られてくる情報を精査しながら問いかける。

”うむ、そうだな。少しであれば大丈夫だろう。”

”我が半身よ、お前の中には我のように意思を持った存在がもう一人いる。”

”其奴は、お前の本来の力を奪い取り、記憶を封印している。もちろん、我らの悲願についての記憶もだ。”

”悲願について教えることでお前の記憶がよみがえれば、奴はもう一度記憶を封印する。奴の記憶封印の厄介なところは、思い出すに至った原因に関しての記憶も封印するところだ。”

”今の状況でそれをされてしまえば、我は再び力を失い二度と今のように動くことはできなくなるだろう。幸い、奴はお前の力を完全には奪えていないのか自由に記憶を封印できるわけではない。思い出された記憶の再封印という形でしか力を使えないらしい。”

”故に、我の力が強くなり再封印を阻止できるまでは記憶を思い出すような迂闊な話ができないというわけだ。信用してくれるか?”

「まぁ、今の話が全部本当かは分からないけど理解はした。記憶を思い出すまでは、信用とまではいかないが…むやみやたらに邪魔するようなことはしないよ。俺も封印されてる記憶には興味が湧いたから。」


こいつの言ってることを鵜呑みにはできないが、今は情報源はこいつしかいないのも確かだ。

”ああ、それでいい。我が奴に対抗できるまで強くなり、記憶を思い出させるまで邪魔をしないというのはとてもありがたい。”

”願わくば、力をつける事にも協力して欲しいが…贅沢だろうか。”

「まぁ、力は丁度欲しいと思ってたし構わないが…」


力への執着が強い。悲願自体の成就に力が必要なのか、俺の記憶が戻る必要があるから力が必要なのか、どっちなんだろうな。

”そうか!それは僥倖!いやぁ、良いことを聞いた。我らは一蓮托生、頑張っていこうではないか。悲願の成就にも、我が半身の記憶を取り戻すのも、どちらも大切な事なのだから。”

これだから心が読まれているのは面倒なんだ。そんなことを思いながら、ドローンを回収すると次の怪奇の出没場所へと向かうのであった。