RECORD

Eno.360 山田 流布音の記録

異界噺/失われた凪

これは異世界の話。

始まりの世界は凪いでた。
生命に上下はなく、思想に迷いはなく、見えずとも感じる大いなる存在が世界を包んでいた。

鏡面の如き水面の世界に波を起こしたのはある者の一言だ。

『見えぬものは存在するのか』

心弱き者はその言葉に迷いを生じさせた。
生じた迷いは大いなる存在との繋がりを弱め、世界から命がこぼれ始めた。
こぼれた命がまた別の者の迷いを生み、世界は徐々に大いなる存在から遠ざかる。

そこで世界の崩壊を予見した力ある者達はその力を持って、大いなる存在に繋がる側と繋がらない側で世界を区切る事にした。

そうして大きな波の影響を抑える事はできたが、思想に迷いを生じさせる者を完全に断つ事は叶わなず始まりの凪は失われてしまった。