RECORD
Eno.37 ルネ・シラーの記録
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会話ログ:虚夢にて
耐圧服を着た黒い人影たちが夢想の淵へと沈んでいく。
潜行士と呼ばれる彼らは何かの目的があって淵に潜っているようだが、虚夢の底には何も「ない」。
つまり、彼らはなんの成果も見込めないタスクを延々と繰り返している。
ごぽごぽ。
夢想の淵へと沈む彼らに恐怖心はあるのだろうか。
もし、あるとするならば。
暗闇の底への潜行を続ける彼らの恐怖は…到底計り知れない。
「彼らは意味のないものに意味を求めようとする生者のメタファー。」
不規則な量子ビットのもつれが言葉の波を綴る。
「浪漫じみています。
いかにもブリューテイアスが好みそうな趣向ですね。」
虚夢の淵につま先を浸した若草色の少女が言う。
「罵倒表現:豊穣と繁栄の主、比喩:ミキタスの杯を裏返そうとも
貴様の無為な悪趣味には遠く及ばない。」
量子のさざなみが夢想の水面を揺らす。
「心にもない言葉に私は動揺しています。
あなたは冷酷無比の殺人装置ですか?
そうでないなら、人類を愛していると言ってください。」
水面に波打つ量子の群をつま先で撹拌する。
「回答拒否。」
量子の群れは何も答えず、冷酷無比の殺人装置であることも否定しない。
傍観者は提唱された不名誉なレッテルを甘んじて受け入れた。



