RECORD

Eno.26 朔 初の記録

ちぎりおきし させもがつゆを いのちにて










最近、子供が嘘ばっかりつくのです。


ああ、そうですね、嘘という言い方は良くない。
空想癖がひどいというべきでした。
それのせいか塞ぎ込むようになったので、こちらを訪れた形になりますね。
自分のついた嘘を信じ込んでしまったようで。

元のあの子は、仲睦まじい友達がいないわけではないのですし、どちらかと言えば男の子らしく外で活発に遊ぶのが好きな子ではあるのです。
しかしなんか…なんでしょうね、ここ数ヶ月は…よくわからない空想の話ばっかりするようになって、私も首を傾げるばかりなのです。

曰く、ずっと夕方の続く世界で遊んできたー、だとか。
そこの世界で怖いお化けと会って逃げ帰って来たーって、騒いだりとか。
不思議な場所に迷い込んだー、とか。

どれもこれも非現実的な話ばかりですし、一緒に行ったと言っていた友達の名前は誰も知らない子ばかりでした。
それを伝えたら怒ってしまって、けども翌日学校に行ったら、青ざめて帰って来て。

「◼️◼️は、居ないって」

なんで当然のことを、恐ろしいことのようにいうのです。
それから少し不登校気味になってしまったものですから、突然降って湧いて来た空想癖が原因かと思って、こちらを訪れた次第です。
あんまりに突然のことですから、発達に問題があるとも思えず、ただただ心のバランスの問題かと思いまして。
空想の友達がいなくなった、なんて妄想から抜け出せたのであれば、あの子の心の病みもなくなるのだと思うのですが。

ですから先生、カウンセリングをお願いいたします。
薬も了解しています。時間がかかることも。



どうぞよろしくお願いいたします。





──201◾️年:ある心療内科のある病院にて。
件の男児については、投薬治療を行なったものの効果は薄かった。
診察時、薬を増やすかと担当医と母親の間で相談が行われている間に、病院から脱走。
以降の足取りは見られていない。

なお、その後女の元では防衛省特殊状況対応本部調査課より聞き込みが行われた。




少年のランドセルは捨てられている。