RECORD

Eno.662 辰森 ユキの記録

20/XX/XX-2

2020年XX月XX日 辰森 爻記す

保護対象者の身体検査が出た。
一人を除き、概ね異常無し。
各人若干の栄養失調や脱水の症状は見られるものの、あの劣悪な環境下では奇跡と言って良い。

身元の分かる者に関しては、比較的早期に親元へ帰す事が出来るだろう。
そうでない者は警察に情報を共有し、ノーブル会の孤児院で預かる事となる。
そして異常の見られた一人に関しては、管理局ないし機関の判断を仰ぐ事となるだろう。

今回拘束した魔女の言に拠れば10年前あのサークル内で生まれた、人の子ではない者が居るという。
信用の置けない証言だが、今日の検査結果がそれを裏付けている。

まず血液……特に赤血球の形状が人間のそれとは明確に異なっているという。
全体の組成に異常を発見し、精密な検査を行ってみた所……という事らしい。

次にDNA……地球上の生物を網羅したデータベースでは該当なし。
機関の持っている怪奇(の内DNAの採取可能なモノ)の中にも該当なし。
いずれのデータベースにも、近縁種すら見つからないという。

魔女達の証言通りであれば、彼女等が保管していた卵殻が手掛かりとなるだろう。
複製した破片で復元モデルを作成した所、人間の赤子が一人丸々収まる大きさだった。
現代の地球でそのサイズの卵を生む生物は確認されていない。少なくとも表世界では。
つまり裏世界の怪奇生物……神秘の卵という事になるが、そうなると候補は無数に広がる。
物語に登場するような幻想生物はまだしも、近年生まれた都市伝説の類であれば手の付けようがない。

少なくともあの子供と卵殻のDNAが一致すれば、
『卵から生まれた人間型の何者か』
ということは確定する。

であれば、差し当たって卵の出処から線を辿っていく必要があるだろう。
鬼が出るか、仏が出るか……鬼も仏も卵を産むなど聞いたこともないが。