RECORD

Eno.270 猫の記録

猫の記憶13

「白と黒の海を見た。満月が輝いていた」



「彼の話と、妹の事を思い出した」




*

『アタシ、さ。昔、月に手を伸ばして、崖から落ちようとしたことがあったのよ』



彼曰く。
酷く月が綺麗な夜だったという。
人が死んで星になるというのなら、手を伸ばして例え落ちたとしても、あの月に届く気がしたという。

その話を聞いて、妹の事を思い出したのは言うまでもなく。

『あの時は、死にたいわけではないけど、生きる理由もなくってね』



自分もそうだったな、とぼんやりとそんな話を聞いていた。
なんでこの話題になったんだったかな、と記憶を巡らせ思い出したのは
自分の話を、彼に打ち明けた時だったのを思い出した。
その時に、そうだ。この人は自分たちに似ているのだと思ったのだ。

だからかな。
余計に家族のように思ってしまうのは。
境遇が似ているから?あり方が似ていたからかも。
わからないけれど。

あの水面に映ったのは、かこと、エンと、それから姉妹が家族のように過ごしている様子だった。



それが願っていることなのか、わからないけれど。
もしそうだったら、確かに幸せだったかも、とも思うけど。
今も十分幸せだからこそ、なんだかそんなものを見てしまうのが、嫌だった。

きっとまだ。まだ、会えるって思ってるからかも、な