RECORD

Eno.32 不藤識の記録

record. 『補色』

 ひとつ上の先輩に、海狛呪理という方がいる。
 まず小さい。次いで青い。
 この2つの印象が強い少女で、とてもからかいがいがある。なんというか……その内悪い男に引っかかるんじゃないかという、ちょっとした危うさもある。
 後はアイスが好き。いっつも食べてる。
 何かある度先輩とは言い合い(というよりはボケとツッコミか)をしているので、相性はいいんだか悪いんだかよく分からない。
 それでも確実なことといえば。
 俺にとって、貴重な先輩の一人であることかな。


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 裏世界のプールは表同様、或いはそれ以上に静かだった。
 そんな静寂の中、踏切台の上に先輩は立っている。今にも飛び込もうとしている、そんな立ち位置。
 先輩が何を考えていたのか、俺に分かるはずもないが。あの時、先輩が今すぐにでも消えてしまいそうな儚さを感じて、焦燥したのを覚えている。

 いつも歯に何か挟まっているような物言いをするものだから、何か抱えているんだろうなとは思っていた。
 それね予想以上に重く――俺と同質の悩みを抱えていたとなると、驚愕が勝る。
 それを聞くために俺の話を差し出したけど、先輩がしたのと同じような話だから、俺がしたのと同じような反応が返ってきた。当然の話。隠し通すのが下手なのも俺と同じ。

 相性の話はさておき、抱く思いは似た者同士なのかもしれない。


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 先輩と俺はある意味で水と油なのかもしれない。神秘的な相性の話だ。
 外から何でも喰らって、器の中身を増やしてごちゃまぜにするのと。内から命を喰らって、器の中身を奪い尽くすのと。
 彼等が一緒に居たら、きっとバランスが良くて、誰も苦しまずに済んだろうに。


「​────その神秘、アタシの身体に押し付けてみるか?」



 天啓だった。
 仮に、この日喰い柘榴が先輩の中に取り込まれた場合、俺も先輩も……少なくとも、一時的な延命はできるのだろう。上手くいけばの話だ。
 根本的な解決になるのかは、幾つかのハードルはある。それらを解決しないことには始まらない。
 それでも希望が見えたのは確かで。

 なるほど。
 やはり、俺と呪理先輩は相性がとても良いらしい。