RECORD

Eno.205 穏岐 穏凪の記録

メモ書き11

魂、というものを信じるか?

私は、確かに在ると信じている。
其れは、『物語』と肉塊を繋ぐ操り糸のようなものだ。

肉塊が感じる、感情という名の電気信号を伝達する、あまりにも高度で、しかしか細い線。


『物語』を、傷つけることは出来ない。

だが、その線を灼き、黒く染め、汚染することができたらどうだろう。

断ち切れば、動力を失った肉塊はただの有機物へと成り果てよう。

そして、自身の色に穢れさせる事が叶うならば。自身がその染めた部分の一部を自由に操り、自身の一部に変えることも出来ようか。


そして、得てしてその魂と銘打たれた糸とは脆いものだ。

揺らぎ、苦悩し、嘆き、悦び、もがき、狂う。

あまりにも過敏に全てを伝えるがゆえに、余程確固たるモノがなければ、この世の中で最もと言っても過言ではないほどに。

手段さえあり、そこに触れることさえ叶えば、簡単に殆どの者の操り糸を掌握できよう。


私達という有機物は、『物語』から伸びる操り糸に手繰られているに過ぎない。

私達は、所詮その程度の産物なのだ。


儚く脆い、生きていると思わされているだけの世界でも、然し数多の楽しみようも在るがゆえ、それを全力で享受もしよう。

感情という名の電気信号を信仰し、求るものの為に操り糸に手繰られもしよう。


だからこそ、思う。


何故皆は、この世如きにそこまで執着するのだろう。

創りあげたものを理解じみたことをされれば嬉しくとも、何故、誰かに完全に認められることを求めるのだろう。


私達は、所詮、自分だけが見える世界の、『物語』の演者でしかないのに。



そして、この疑念を表で語ることは、きっと私の運命にはないことだろう。

この世には、言葉にして伝えずとも良いものもあるのだから。


私は、ただ頁を捲る側。

皆々の『物語』に、私の黒鉛を混ぜるだなんて、失礼じゃないか。