RECORD

Eno.763 天堂アヤメの記録

学園の辻斬り

昨日と今日は、殆どの時間を裏世界で過ごしていた。
斃した怪奇は数知れず。良い鍛錬になったと思う。

所詮、私は復讐者だ。
平和な日常なぞ望めない、ただの殺人鬼。
表世界での生活は、あくまで世界に紛れるためであり……心から、楽しんではいけないのだ。

……目を瞑ると、優しいクラスメイトたちの顔が浮かぶ。
学校がこうも良い場所だとは思いもしなかったことだ。
もし彼らが私のしてきたことを知ったら、幻滅するだろうか。
……優しい人でありたい彼は、私を嫌いになるだろうか。

それは、少し……嫌だな。

…… …… ……。

……表の事を考えないように、また昔の話をしようと思う。



私の世界には『異能』が存在した。
思春期の女性が稀に発現する特殊能力。その者の精神面を色濃く移す、魔法のような力。
そんな力を最高権力者である王が見逃すはずもなく、彼女たちの多くは王直属の近衛として養成するための学園に入れられた。
平和も、家族も、全てを失った私も……復讐の機会を得るために、そこに入り込んだ。

そこで起きていた事は、王や王子の側近を巡る醜い蹴落とし合いだった。
誰もが理想のために、容易に人を殺し、辱め、支配しようとする世界。
強き者だけが生き残る蠱毒。そう形容してもいい場所だった。

そこで私は、初めて人を斬った。

斬らねば、私がやられていた。

……そうやって、がむしゃらに斬り続けて。
いつしか私は『学園の辻斬り』として、噂されるようになった。

……人を斬っても何も感じなくなったのは、いつからだっけ。