RECORD
Eno.392 悪喰 白の記録
記憶の断片その1
今にして思えば。
あれはどれだけ"空っぽ"な日々だったか。
空っぽだったから、ほとんど何も覚えてないし。空っぽだったから覚えていたくもない。
ボクはあの日々に"恥"を覚えているから。
「―――――――――」
それでも自分の声がかき消されるほどの雨音に包まれている時は、ふと思い出す。それがほとんど唯一と言っていい、覚えていられた……日々の彩?に近かったから。
あの頃のボクは雨音を聞きつけると、外を見るようにしていた。特に理由はないけれど、そうしても大丈夫だと分かっていたからだったと思う。ボクはそれを理屈じゃなくて、なんとなくそう思っていただけだったけれど。
だから晴れている日は奥でほとんど眠っていたし、外を眺める時も、ちょうどその時起きていて、雨音を聞き取れた時だけだった。結局どっちでも良かった。でも何故か、雨が降っていると分かったらそうしていた。
でも、外に出たことは一回もなかったんだ。結局、ボクは雨のこともそこまで信じていなかったんだと思う。何も信じていなかった。だから空っぽだと思うんだ。
それでも生きていけたから生きていた。ただ生きるだけ。満たされることのない生。それがボクの望みだったけど、しっかりとそれを望んだわけでもなくて……やっぱり思いかえれば思い返すだけ、ちょっと恥ずかしく思えてくる。
今もきっと心のどこかではそうなんだろうな。雨が降れば、少し気持ちが楽になるけど、それは少しだけだし。その少しできた余裕も、こうやって勝手に過去を思い出して埋め立ててしまうから。だからボクは雨が好きだけど、雨のことを信じてはいない。雨はボクの行動を少しばかり大胆にしてくれるけど、決してボクを救ってくれない。
―――今は……満たされたい。そう思っているから。ただ溜まることなくどこかに流されていく雨水のようにではなく、ボクという器に少しずつ自分で汲んだ水を注いでいきたい。
だからここに来たのだから。
「先生、おはようございます。これからよろしくお願いします」
雨の中、校門前で"ワタクシ"を待ってくれていた先生にお辞儀して、目の前を見上げた。
雨に遮られて、ぼんやりとしているけど、ワタクシがこれから通う学校の姿を目に焼き付けて。
確かに今はワタクシの胸にある、期待と高揚とをしっかりと感じながら、校門へとその一歩を踏み出した。
あれはどれだけ"空っぽ"な日々だったか。
空っぽだったから、ほとんど何も覚えてないし。空っぽだったから覚えていたくもない。
ボクはあの日々に"恥"を覚えているから。
「―――――――――」
それでも自分の声がかき消されるほどの雨音に包まれている時は、ふと思い出す。それがほとんど唯一と言っていい、覚えていられた……日々の彩?に近かったから。
あの頃のボクは雨音を聞きつけると、外を見るようにしていた。特に理由はないけれど、そうしても大丈夫だと分かっていたからだったと思う。ボクはそれを理屈じゃなくて、なんとなくそう思っていただけだったけれど。
だから晴れている日は奥でほとんど眠っていたし、外を眺める時も、ちょうどその時起きていて、雨音を聞き取れた時だけだった。結局どっちでも良かった。でも何故か、雨が降っていると分かったらそうしていた。
でも、外に出たことは一回もなかったんだ。結局、ボクは雨のこともそこまで信じていなかったんだと思う。何も信じていなかった。だから空っぽだと思うんだ。
それでも生きていけたから生きていた。ただ生きるだけ。満たされることのない生。それがボクの望みだったけど、しっかりとそれを望んだわけでもなくて……やっぱり思いかえれば思い返すだけ、ちょっと恥ずかしく思えてくる。
今もきっと心のどこかではそうなんだろうな。雨が降れば、少し気持ちが楽になるけど、それは少しだけだし。その少しできた余裕も、こうやって勝手に過去を思い出して埋め立ててしまうから。だからボクは雨が好きだけど、雨のことを信じてはいない。雨はボクの行動を少しばかり大胆にしてくれるけど、決してボクを救ってくれない。
―――今は……満たされたい。そう思っているから。ただ溜まることなくどこかに流されていく雨水のようにではなく、ボクという器に少しずつ自分で汲んだ水を注いでいきたい。
だからここに来たのだから。
「先生、おはようございます。これからよろしくお願いします」
雨の中、校門前で"ワタクシ"を待ってくれていた先生にお辞儀して、目の前を見上げた。
雨に遮られて、ぼんやりとしているけど、ワタクシがこれから通う学校の姿を目に焼き付けて。
確かに今はワタクシの胸にある、期待と高揚とをしっかりと感じながら、校門へとその一歩を踏み出した。