RECORD

Eno.579 真里谷 関の記録

memo.111


 裏世界の「願いを形にする」店で手に入れた、貝殻のような石。
 叶さんが話してくれた貝殻が象徴するものの中にも、もしかしたら俺の願いがあるのかもしれない。だけどあの時思い付いて言わなかった、別の意味の方が当てはまっているんじゃないか。貝殻は巡礼のシンボルのひとつだ。そして巡礼の目的のひとつは罪の償い。

 裏世界に足を踏み入れるようになってから、そこにいる人たちを知るほどに後ろめたさ、罪悪感が徐々に積まれていく。普段はあまり気にならないけど、ふとした時に思い出す。楽しんでる場合か? 面白がっていい場所なのか? 何も失ってない、傷付いてさえいない俺が。……観光気分だと言ってしまった。あの時あの駅で、考えもなく言えてしまったんだ。

 自分が人に何かしたっていうわけじゃない。知らないうちに傷付けてしまっていることはあるかもしれないけど、少なくともそう望んだことなんかない。頭ではわかってる。表でだって悲劇はいつでも起きていて、苦しい思いをしてる人はたくさんいて、どこかでそれを知っていても普通に笑って暮らせるし、だからって非難されるような謂れはない。だけど、面白いものは面白いんだからどうしようもないと言ったのが嘘じゃないように、後ろめたいものは後ろめたくてどうしようもないというのも俺にとっては事実だ。

 局から下りて来る仕事。自分がやらなければ、他の誰かに皺寄せがいく。そう思うと気分が悪いから、いつまで経っても慣れない戦闘に参加したりもしてる。それは本心だ。でもそれだけがすべてじゃないと最近気付いた。戦いたくはないけど、いや、だからこそ戦うことですこしだけ楽になれる。要は自分も犠牲を払っていると言いたいんだ。だからちょっとくらい楽しむのを許してくれ、って。これじゃ俺にやられる怪奇だって浮かばれない。自分勝手な言い訳に巻き込まれるようなものだ。これは良いことじゃない。かといって、他にどうすればこの後ろめたさを免れることが出来るんだろう。

 ───それがこの石の正体。それともこれはこじつけすぎだろうか。しかし、つい持って帰ってきてしまったけど、あのテントの中で浮かぶ石の列に混ぜておければよかったかなぁ。