RECORD

Eno.376 戸羽廻の記録

観測地点、UFO招来その4

某日、同時刻



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戸羽 [Eno.376] 2025-06-01 21:21:48 No.1045012

――前回の実行から翌日、同時刻。

西の空に向かって太陽が傾いている。
気圧条件を確かめる。晴れ模様の高気圧、気圧差による頭痛。
地面に描いた陣は既に消え、僅かな土の盛り上がりが痕跡を残すのみ。

結果への期待そのものは最早無い。
継続的な物事には始点があるし終点もある。
これは一つの儀式の些細な終点。
高く積み上げたドミノを一手で崩すそれ。

後輩?呼んでも良いが来るか試しても良い。

来なかった所で一人でもやる。

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クズヤマ [Eno.225] 2025-06-02 08:08:33 No.1072142

「こんばんは」

 黄昏時、自分は矢張りそこを訪れた。
 いつも通り、大した理由も無く。

 最終回である。
 どうでもいいけど。
 漠然と来ているだけだ。始まりも無ければ終わりも無い。

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戸羽 [Eno.376] 2025-06-02 12:00:41 No.1081486

「来たか」

いつも通りに振り返った。
夕方のチャイムが鳴り、子供は捌けていく。
騒々しい公園が少しだけ静かになる。

「踊りは好きなものでいい。
 予想していたかもしれないが」

まだ全員揃いもしない内から説明する。
この実験は常に自分勝手に行われている。

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クズヤマ [Eno.225] 2025-06-02 22:28:00 No.1116469

「好きなもの……」

 まあ、指定があるなら覚えて来いって言うだろうし。
 言われなかったという事はそうなんだろうけど。

「そう言われると困りますね」

 好きな踊りって何だよ。

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戸羽 [Eno.376] 2025-06-02 22:32:47 No.1116845

「じゃあお前はラジオ体操してろよ」

誰でも出来る簡単な踊りを提案した。
踊りというよりは……体操なのだが……

大真面目に呪文を唱えながらラジオ体操する姿は
まあまあ滑稽に映るかもしれない。

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クズヤマ [Eno.225] 2025-06-02 22:37:55 No.1117316

「ラジオ体操で良いならそれで行きますけど」

 良いんだ。

 ラジオ体操なら公園でやっても不自然じゃない範囲かもしれない。
 偶にやってるお爺さん居るし。
 時間帯はともかく……。

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戸羽 [Eno.376] 2025-06-02 22:47:51 No.1118036

「ラジオ体操第四までは当然知ってるよな」

「それで頼むわ」

「私が上やるから」

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クズヤマ [Eno.225] 2025-06-02 23:04:02 No.1119155

「あ~ラジオ体操第4ですか。分かりますよ、勿論……」
「出来る訳ねえだろ」

 ちょっと人間離れする必要がありそうですね。

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戸羽 [Eno.376] 2025-06-02 23:17:33 No.1120174


「何故……最初から諦めるんだ?」

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こばと [Eno.523] 2025-06-02 23:22:44 No.1120479

「じゃウチは “終” ってテロップの役やる」

しれーっと混ざる。 ギャルコミュ力しぐさだ。
何の話かはサッパリ掴めないが、ラジオ体操第四は知っていた。

「つか、UFOと何の関係があんだよ。 ラジオ体操第四」

まさか……踊るのか? だとしたらオワリですよオワリ

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クズヤマ [Eno.225] 2025-06-02 23:25:16 No.1120622


「僕は、有意義な事はしません――」

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戸羽 [Eno.376] 2025-06-02 23:31:16 No.1121064

「踊りは古来より色々な儀式や表現に使われる。
 神への祈り、豊穣、儀式、抵抗、自己表現」

「私はUFOを呼ぶためにそうする。
 どの踊りが適切かどうかはわからない。
 そもそも前例があるとしてもそれが真実かもわからない」

「なのでお前達の自由意志に任せる」

「コバトはテロップ担当な」

「やるか」

言いつつ録音していた音楽を流し始める。
どう考えてもラジオ体操の曲ではない。
奇怪な音程のホイッスルの音。

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こばと [Eno.523] 2025-06-02 23:53:05 No.1122536

「ンだよテロップ担当って。 意味わからんが」

上町こばとには、ホイッスルに付けるテロップが分からぬ。
上町こばとは、ただの一介の信奉者である。
聖書を読み、聖歌を歌って暮らしてきた。
けれどもノリに対しては、人一倍に敏感であった。

OK、G○○gle、翻訳開いて。

एक दो तीन चार पॉंच छः सात आठ नौ दस ग्यारह बारह तेरह

液晶画面に浮かぶ謎の歌詞。
いったいこれをどうしろというのか。

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クズヤマ [Eno.225] 2025-06-03 00:03:05 No.1123135

「何だこの曲」

 どう考えてもラジオ体操の曲じゃない。
 著作権に配慮されているね――。

「テロップ担当頑張ってください」

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戸羽 [Eno.376] 2025-06-03 00:07:45 No.1123474

「ベントラ ベントラ スペースピープル」

どうでも良い呪文が唱えられる。
どうでも良い踊りが踊られる。
どうでも良い思念を宙に向ける。

これで何か起きるのか?起きたら面白い。
起きなかったら?それでも面白い。

期待を裏切られることは好きだ。
期待を裏切られるときの落差は色々な物を実感させてくれる。
期待通りではつまらない。
期待通りの物事は大抵、既知のことだから。

戸羽廻は何でも面白がる。
それは面白い以外で感情表現することを放棄しているから。
だからこれも面白いと単純化するのだろう。

「ディス イズ キタマシティ」

正しいのかもわからない変な音楽。
後輩の流すヒンドゥー語だかサンスクリット語だかのテロップ。
ラジオ体操第四ではあるが無理のある変な踊り。
これが効果を持つとは思わない。念も意味がないかもしれない。
足下の陣を靴で消す。

出鱈目だ。折角人を呼んだのに台無しにしている。

そこで戸羽は真剣に念じた。
西の空に。

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戸羽 [Eno.376] 2025-06-03 00:08:28 No.1123531


それから笑った。

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クズヤマ [Eno.225] 2025-06-03 00:32:15 No.1124848

「アポクアウクトッペ」
 
 弱々しい念。
 意味の分からない呪文。
 古びたカスタネット。
 在り来たりな踊り。

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クズヤマ [Eno.225] 2025-06-03 00:32:34 No.1124876

 無関心な念を送る。
 無価値な呪文を唱える。
 無意味な音を鳴らす。
 無意義なダンスを踊る。

 暇潰しだ。
 死ぬ迄の時間を、徒に浪費している。
 こんな事に何の意味も無い。

 西日を浴びて笑う戸羽先輩が眩しい。
 若し、本当にUFOが来てしまったら、あの人はどうするのかな。

 どうでもいいけど。

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戸羽 [Eno.376] 2025-06-03 19:24:28 No.1159850

空を見た。
手帳に×を刻む。



「帰るぞ」



二人を振り返る。
踵を返す。

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こばと [Eno.523] 2025-06-03 20:01:42 No.1161740

音も異様も消え失せてみれば、春の夕焼け鮮やかに。
そぞろ帰り出す学童ら。笑っているのかカラスの声。

充電が切れかけたスマートフォンを、ポシェットに押し込んだ。

「勝手に仕切んなっての」

的外れな儀式の終わりと。
影踏み歩き出す、革靴の足音。

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クズヤマ [Eno.225] 2025-06-03 23:23:25 No.1173603

「そうですね」

 返事をして、家路への一歩。
 それは予想通りで、当然の結果だけど。

 UFOは今日も来なかった。

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