RECORD
Eno.763 天堂アヤメの記録
赤いマフラー
私に友人と呼べる相手は少ない。
少なくとも、この世界に来るまではそうだった。
故郷の世界から弾き出され、世界渡りとなった私が属していた場所に居た人たちは、どちらかと言うと『仲間』が正しい表現だと思う。
歳の近い相手は居たし、実際友人と見て良い間柄だったのかもしれないが、心の何処かで一線を引いていた。
この世界では……少なくとも表では、クラスメイトが友人と言えるのかもしれない。
学校外でも何人か……名前を挙げるなら、メリカとかが親しい友人なのだろう。
メリカからは実に多くの体験を学んだ。
合法カジノでのギャンブル、ゲームセンターでのガンシューティングなど。
私じゃ到底立ち寄らないような場所に連れて行って貰い、楽しい時間を過ごさせてもらった。
なんだかんだ、同性の友人としては一番親しい仲なのかもしれない。
……裏でも共に例の仕事をする仲だ。
クラスメイトと言えば大勢居るが……一番世話になっているのは誠だろう。
登校して数日の時から気にかけてもらったし、遊びに誘ったりもしてくれた。
何かと気にかけてくれる良い人だ。……私のような奴に構うより、他の相手に構うべきだと思わなくもないが。
ただ、彼の前だと不思議と話しやすい。どうしてかは分からないが、余計なことまで喋りそうになる。
きっと何処か、彼と似通う物があると思っているからなんだろう。
無論、クラスメイトの人たちとも仲良くやらせてもらっている。
6月4日は誕生日だといつの日か言ったのを覚えてもらっていた。
ケーキ、キーホルダー、折り畳み扇子、かき氷、ミルクレープ、ボールペン、揚げパン、クッキー缶、コロッケ、焼き菓子、紅茶葉……ミサンガ。
多くのプレゼントを貰ってしまい、困惑と嬉々とした感情のあまりに涙を流してしまった。
誕生日を祝ってもらうなどいつ振りなんだろうか。こんな大勢に祝われる経験は……少なくとも初めてかもしれない。
……何もお返し出来ないというのに、ありがたいとしか言いようがない。
表において脆弱な私にしては、多くの友人を作ったと思う……きっと皆が優しいからなんだろうが。
その優しさに甘えて、つい長い時間を過ごしてしまいそうになる。
……嗚呼、良くない。私は復讐者だ。
このような平穏を得て胡座をかくなど、断じて許してはいけない。
私の生きる道は既に定まっている。
そこに光が差し込んではいけないのだ。決して。
……そう、決して。
……友人にまつわる昔話がある。
私に赤いマフラーをくれた、たった一人の親友の話が。
学園に身を潜め、敵対者を斬る毎日だった私にも利害の一致する者たちが居た。
学園のカーストにおいて最下段に属する者たち。弱さのあまりに奴隷や召使のように使われている生徒たちだ。
彼女たちに私は、学園の体制を崩そうとするヒーローのように映ったのだろう。
隠れ場所や寝泊まりする場所などを融通してもらい、それなりに親しい間柄だった。
その中でも一人、特段仲良くしてくれる子が居た。
その身分にも関わらず、快活で明るい性格。
編み物や裁縫が得意で、同じ寮の子の傷んだ服などを縫ったりしていたのを覚えている。
戦いの日々でボロになった制服も、彼女にどうにかして貰っていた。
思えば、赤いマフラーは誕生日に貰ったものだった。
似合うからと押し付けられ渋々付けていたけれど、私がマフラーを身につけていると何処か嬉しそうで。
いつの間にか私のトレードマークのようになっていたか。
王子の側近になれなくとも、学園を卒業したら仕立屋になりたいと言っていたのを今でも覚えている。
彼女は決して高い立場を望む野心家ではなかった。ただ異能が使えるだけの女の子だった。
だからこそ、私は何処か安心して話が出来たのかもしれない。
……別れは突然だった。
戦いに巻き込まれたと聞いて駆けつけた時には遅かった。
運悪く近くに居た彼女は肉盾にされ……息も絶え絶えになっていた。
学園で命が失われることなど日常茶飯事だ。
王の息の掛かった学園だから、一般的な法など意味をなさなかった。
だから、あの子は……戦いが終わった後も手当を受けることなく、死んでいった。
……やはり、王は斬り捨てるべき邪悪だと。
形見のマフラーを握りしめて、その時改めて認知した。
少なくとも、この世界に来るまではそうだった。
故郷の世界から弾き出され、世界渡りとなった私が属していた場所に居た人たちは、どちらかと言うと『仲間』が正しい表現だと思う。
歳の近い相手は居たし、実際友人と見て良い間柄だったのかもしれないが、心の何処かで一線を引いていた。
この世界では……少なくとも表では、クラスメイトが友人と言えるのかもしれない。
学校外でも何人か……名前を挙げるなら、メリカとかが親しい友人なのだろう。
メリカからは実に多くの体験を学んだ。
合法カジノでのギャンブル、ゲームセンターでのガンシューティングなど。
私じゃ到底立ち寄らないような場所に連れて行って貰い、楽しい時間を過ごさせてもらった。
なんだかんだ、同性の友人としては一番親しい仲なのかもしれない。
……裏でも共に例の仕事をする仲だ。
クラスメイトと言えば大勢居るが……一番世話になっているのは誠だろう。
登校して数日の時から気にかけてもらったし、遊びに誘ったりもしてくれた。
何かと気にかけてくれる良い人だ。……私のような奴に構うより、他の相手に構うべきだと思わなくもないが。
ただ、彼の前だと不思議と話しやすい。どうしてかは分からないが、余計なことまで喋りそうになる。
きっと何処か、彼と似通う物があると思っているからなんだろう。
無論、クラスメイトの人たちとも仲良くやらせてもらっている。
6月4日は誕生日だといつの日か言ったのを覚えてもらっていた。
ケーキ、キーホルダー、折り畳み扇子、かき氷、ミルクレープ、ボールペン、揚げパン、クッキー缶、コロッケ、焼き菓子、紅茶葉……ミサンガ。
多くのプレゼントを貰ってしまい、困惑と嬉々とした感情のあまりに涙を流してしまった。
誕生日を祝ってもらうなどいつ振りなんだろうか。こんな大勢に祝われる経験は……少なくとも初めてかもしれない。
……何もお返し出来ないというのに、ありがたいとしか言いようがない。
表において脆弱な私にしては、多くの友人を作ったと思う……きっと皆が優しいからなんだろうが。
その優しさに甘えて、つい長い時間を過ごしてしまいそうになる。
……嗚呼、良くない。私は復讐者だ。
このような平穏を得て胡座をかくなど、断じて許してはいけない。
私の生きる道は既に定まっている。
そこに光が差し込んではいけないのだ。決して。
……そう、決して。
……友人にまつわる昔話がある。
私に赤いマフラーをくれた、たった一人の親友の話が。
学園に身を潜め、敵対者を斬る毎日だった私にも利害の一致する者たちが居た。
学園のカーストにおいて最下段に属する者たち。弱さのあまりに奴隷や召使のように使われている生徒たちだ。
彼女たちに私は、学園の体制を崩そうとするヒーローのように映ったのだろう。
隠れ場所や寝泊まりする場所などを融通してもらい、それなりに親しい間柄だった。
その中でも一人、特段仲良くしてくれる子が居た。
その身分にも関わらず、快活で明るい性格。
編み物や裁縫が得意で、同じ寮の子の傷んだ服などを縫ったりしていたのを覚えている。
戦いの日々でボロになった制服も、彼女にどうにかして貰っていた。
思えば、赤いマフラーは誕生日に貰ったものだった。
似合うからと押し付けられ渋々付けていたけれど、私がマフラーを身につけていると何処か嬉しそうで。
いつの間にか私のトレードマークのようになっていたか。
王子の側近になれなくとも、学園を卒業したら仕立屋になりたいと言っていたのを今でも覚えている。
彼女は決して高い立場を望む野心家ではなかった。ただ異能が使えるだけの女の子だった。
だからこそ、私は何処か安心して話が出来たのかもしれない。
……別れは突然だった。
戦いに巻き込まれたと聞いて駆けつけた時には遅かった。
運悪く近くに居た彼女は肉盾にされ……息も絶え絶えになっていた。
学園で命が失われることなど日常茶飯事だ。
王の息の掛かった学園だから、一般的な法など意味をなさなかった。
だから、あの子は……戦いが終わった後も手当を受けることなく、死んでいった。
……やはり、王は斬り捨てるべき邪悪だと。
形見のマフラーを握りしめて、その時改めて認知した。