RECORD
Eno.84 佐鳥まなみの記録
或る教室の放課後
どこかの学校。どこかのクラス。
何でもない晴れの日の、人も疎らになってしまった教室で
噂好きな女子達が部屋の隅で私語を交わしている。
![]()
一人が口を開けば、もう一人は怪訝な顔。
![]()
きっと神秘とは無縁で無辜なティーンエイジャー。
だから有象無象の都市伝説の一つくらいにしか思わない。
![]()
![]()
ふぅん、と興味の無さそうな相槌。
![]()
この社会において名前の持つ役割はあまりにも多い。
だからヒトは現実以外にも様々な名を持つ。
![]()
時としてそれは自分で決められるものではない。
生まれ持ってしまった名は、特に。
![]()
ひらひらと振られる進路相談の紙。
そうした話に夢中になる時間は、とうの昔に過ぎ去ってしまった。
![]()
少し困ったように笑って机に戻る。そんな放課後。
だってそれは彼女達にとって関係の無い世界の話。
ずっとずっと空想の向こう側にあるモノだからこそ
嘘だと笑い飛ばす事が出来るもの。
けれど。
笑い飛ばす事ですらも出来なくなった人の為に。
こんな話にすら縋らなくてはいけない人の為に。
ミナトリサマは今日も都市伝説として語られている。
何でもない晴れの日の、人も疎らになってしまった教室で
噂好きな女子達が部屋の隅で私語を交わしている。
「ねえねえ」「ミナトリサマって知ってる?」
一人が口を開けば、もう一人は怪訝な顔。
「……なにそれ?怪談話?」
「アンタ昔からそういうの好きだよねぇ」
きっと神秘とは無縁で無辜なティーンエイジャー。
だから有象無象の都市伝説の一つくらいにしか思わない。
「良いじゃん 別に好きでも」
「曰く頷いた人の名前を奪っちゃうオバケでさ~」
「──御名を盗る。だから"御名盗り様"……なんだって」
ふぅん、と興味の無さそうな相槌。
「頷かなければ良いだけじゃん そんなの」
「名前が要らない人なんていないでしょ」
この社会において名前の持つ役割はあまりにも多い。
だからヒトは現実以外にも様々な名を持つ。
「ん~ どうだろね」
「キラキラネームとかなら要らない人は居るんじゃない?」
時としてそれは自分で決められるものではない。
生まれ持ってしまった名は、特に。
「……まあ アンタの言いたい事は分かるけどさ」
「そろそろ夢ばかり見てる時間じゃないでしょ」
ひらひらと振られる進路相談の紙。
そうした話に夢中になる時間は、とうの昔に過ぎ去ってしまった。
「はぁい」「ちょっと退屈してただけだよ」
少し困ったように笑って机に戻る。そんな放課後。
だってそれは彼女達にとって関係の無い世界の話。
ずっとずっと空想の向こう側にあるモノだからこそ
嘘だと笑い飛ばす事が出来るもの。
けれど。
笑い飛ばす事ですらも出来なくなった人の為に。
こんな話にすら縋らなくてはいけない人の為に。
ミナトリサマは今日も都市伝説として語られている。