RECORD

Eno.179 沙魚川 銀の記録

数年前の記憶2

…見れば見るほど不思議な世界だ。ずーっと夕焼けのような朝焼けのような空が続いている。
しかも場所によって景色がだいぶ違うし。

それにしても…お腹が空いた。何か、食べれるものは…
気づいた時には片手に本を一冊持っていた。確かに読書は好きだけど、食べる物ではない。

そのはずなのに

糊やインクの匂い。
前までは落ち着くだけのその匂いが、
全て美味しそうに思える。

嫌だ!はしたない!こんなの…僕じゃない!

でも、本能には抗えなかった。
人間の頃には絶対に食べなかったであろうソレを、
がつがつと食べ始めた。

甘い!美味しい!僕が求めていたもの。
マナーも気にせず夢中で食べた。

腹を満たし 落ち着いてからやっと、自分の正体に気がついた。
紙魚だ。紙を喰らう紙魚の化け物だ。

もう人間ではない。誰かに嫉妬する必要もない。食べて生きればいいだけ。もう助けもいらない。

喜びに満ちているのか、はたまた絶望したのか。四つの手は震えていた。