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Eno.111 鍬田 スズの記録

宇宙戦隊ストレンジャー:最終回『銀河の明日を掴むもの』1/2

―――《秘密結社グラティア》本部・宇宙要塞グラティア。
宇宙戦隊ストレンジャーとの最終決戦が幕を開けておおよそ十二時間後。
動力炉を破壊され、崩壊の始まる大迷宮の深部に異形の怪人たちがひしめいている。

対するは漆黒の外骨格に包まれた精悍なる巨躯。大総統ドミヌスの御使たる《監察官》……
結社を追われたはずの幹部レガトゥス、スタッグシザーズその人である。
世界最強の甲虫に相応しき甲冑も今は無数の戦傷を受け、流れ出た熱き血潮が歩んだ道の標を刻む。
しかし闘志を宿した双眸は蒼く燃え立つ焔となって燃え上がり、爆炎に照らされて尚爛々と光り輝く。

「……………久しいな、貴様ら…」


『黒騎士……ッ!? おのれ、薄汚い裏切り者め! 見張りは一体何をしていた!!?』


『フン、どの面下げて此方へ参った? この期に及んで謀反とは、見下げ果てた奴じゃ。虫唾が走るわ!!』


『まさか加勢に来たってんじゃねえだろうな? 笑えるぜ。テメエの企みなんざお見通しなんだよ!!』


「戯言を。我が君…は………この奥に、おられるか……」


『ハッ!! 貴公が大総統ドミヌスの威光を嵩にきて成したる悪逆非道の数々……忘れたとは言わせんぞ!』


『大方奴さんがたの道案内でもしてたんでしょうよ。オジサンさァ、そういうの許せないんだよねェ…』


「我らの望む未来は同じ。無益な争いを…止めなければ……」


宇宙の平和を守るストレンジャーと人類の未来を求めるグラティア。
両者の衝突がたとえ必然であったとしても、求める本質にさほどの違いなど有りはしない。
突き詰めて言えば、どちらもただ人の幸せを願っているだけだ。

恩讐を越えて、共に築ける未来があるかもしれない。
一縷の可能性を信じればこそ、スタッグシザーズは最終決戦にその身を投じた。

賢明なる大総統ドミヌス。そして熱き正義の心を宿したストレンジャーズ。
万にひとつ、どちらが斃れたとしても取り返しのつかない状況に陥るのは自明の理だ。

『ハァ? ンだよやっぱ裏切ってんじゃねえか!!
テメエも焼きが回ったモンだなァ、黒騎士さんよォ!!!』


『フォフォフォ。ここは任せましたぞ各々方。
小生、かくなる上は憎きストレンジャー共と刺し違える所存なれば!!』


「…………オクトスペクター、貴様……ッ!!」


破滅の時が刻々と迫る。
讒言と奸計を弄する怨敵の背を空しく見送り、十重二十重に囲む同胞の影を見渡して。
数限りない憤激と怨嗟の叫びが地を揺るがす程に湧き上がる。

『『『許さぬ! 許せぬ!! 許せるものかよ!!!』』』


「………承知、した。已むを得ぬ……とあらば…」


―――幾多の血戦を越えた最果て。最期の戦場に立っている自覚があった。
大総統ドミヌスとすべての同胞。そして仮面の下を晒してくれた好敵手たち。幾多の面影が胸に溢れる。
致命の傷をいくつも負い、生命の灯は今にも消えて果てようとしている。

未だかつて、これほどまでに”生”の実感を得られたことがあっただろうか?
人類の魁たる異形の生命。《監察官》スタッグシザーズはこの時、この瞬間のために生きてきた。
すべてはより良い明日のために。天啓のごとき悟りを得て、清新にして凄烈なる闘気を全身に漲らせる。

希望と絶望、愛憎と因果が織りなす道の終着点。

血で血を洗う死闘が幕を開けた。