RECORD

Eno.270 猫の記録

誰かの記憶

小さな白猫。
あたたかなおうちに、飼われていました。
毛並みが良くきっと、とても愛されていました。

でも、いつも家の人たちは忙しそうで、大変そうで。
猫の手も借りたそうな人たち。猫が人ならばたくさん助けたのに。
だけれど、猫にできることはありません。
できること。家の人たちが元気のない時に、擦り寄るくらい。

ある時、偶然見つけた開いた窓。
窓からぴょんと、外の世界に飛び出して。
どこかの公園にたどり着きました。

沢山の人に会いました。優しい人たちばかりでした。
人の言葉はわかりませんが、時折家の人たちみたいに、暗い顔をしている人もいました。
だから、猫は寄り添いました。
人の言葉に返事をするように、鳴きました。

そんな鳴き声が人の言葉を話しているように聞こえる、
なんて噂が立ったことは猫はしりませんが。

家に帰ってからも同じようにお家の人に寄り添って。
なんだか人みたい、なんて笑われて。
猫は幸せでした。

子猫は病気にかかりやすい。
外に出るようになってから、なんとなく体調が悪くなったのを感じました。
目も痒い、痛い。でも、自分のせいで暗い顔をさせたくありません。
よたよた、子猫はまた家を抜け出して。

誰もいない、公園の茂みの中。
子供の秘密基地みたいなそんな場所。
眠るみたいに。


***

満月の夜。
少女は、ずっと両親からずっと愛されたいと思っていました。
けれどいくら頑張ったって、両親が少女を見ることはありませんでした。
皆が寝静まった夜。起こさないように静かにベランダへと出ました。
冷たい夜風が頬を撫でました。
空は透き通って綺麗で、たくさんのお星さまが見えました。
お星さまは願いを叶えてくれるから。

だから、少女は、おほしさまにねがおうとして、空に手を伸ばそうと。

たかいところから。

最後に見えたのは、おおきなまるいおつきさまでした。