RECORD
Eno.212 天空院 聖司郎の記録
記憶にある色彩
予報はずれの雨が降る。不可思議な雨が降る。
家までの帰り道にだけ降る雨。それは決まって、怖いモノを視てしまった時に降る。
まるで、己にまとわりつく昏い影を洗い流すかのように。
しとしと。しとしと。
地を濡らす冷たい、けれど清浄な雫。
──小僧。雨は好きか?
いつか聞いた声が過る。
あの時、自分は何と答えたのだっけ。
傘をずらして空を見上げた。曇天。
暗灰の雲から落ちる雨は、ごく普通のそれだ。
「…………。」
雨は好きだ、と。答えた気がする。たぶん。
朧気な記憶。問う声の主も、男なのか女なのか分からない。
でも、ひとつだけ。確かなのは。
雲の切れ間から差し込んだ、陽光を受けて煌めく色。
澄んだ湖面を思わせる、碧。
その鮮やかさだけは、ずっと。覚えている。
家までの帰り道にだけ降る雨。それは決まって、怖いモノを視てしまった時に降る。
まるで、己にまとわりつく昏い影を洗い流すかのように。
しとしと。しとしと。
地を濡らす冷たい、けれど清浄な雫。
──小僧。雨は好きか?
いつか聞いた声が過る。
あの時、自分は何と答えたのだっけ。
傘をずらして空を見上げた。曇天。
暗灰の雲から落ちる雨は、ごく普通のそれだ。
「…………。」
雨は好きだ、と。答えた気がする。たぶん。
朧気な記憶。問う声の主も、男なのか女なのか分からない。
でも、ひとつだけ。確かなのは。
雲の切れ間から差し込んだ、陽光を受けて煌めく色。
澄んだ湖面を思わせる、碧。
その鮮やかさだけは、ずっと。覚えている。