RECORD

Eno.43 神林 雨の記録



「私が他人から見て優しいってされんのも」
「この優しさで救われた誰かが、
 別の誰かに救いをもたらしてくれるなら、それでよかっただけで」

だって誰かの幸せに自分は必要と考えなかったから。

「誰も私に与えないのが普通だから、得るのが怖かったし」
「得たら得たで、失うのが怖いし」



臆病な話だと思う。
この感覚は今でも残っている。

──自分自身は誰かにとっての大きな意味を持つことを信じられない。
──自分自身は誰かにとっての幸福の一部であることを信じられない。


──そのくせ、自分自身が誰かのために犠牲になることを厭わない。

残っていて奥底に仕舞っているだけで、
誰にも言わずに、自分の表を作り上げている。

──自分自身は誰かにとって大きな存在だ。
──自分自身は誰かの幸福に必要な存在だ。

──自分自身が誰かのために簡単に投げ出されてはならない。


抑え込んでいれば内側で時折悲鳴が上がるけれど。
それだって、しなきゃいけないことだから。

仕舞っていることを、口に出してしまえば無意味だ。
私は変わるためにずっと仕舞い続けて、自分の思考が陰るのを防いでいる。
ヤケになって自分を投げ捨ててしまいたくなるのを、自分の思考一つで抑えている。

少しでも忘れることができれば、確かにその瞬間は素直で真っすぐな私だから。
少しでも自分自身を見捨てずにいられれば、私はもっと皆に優しくなれるから。
この痛みは、私が動く原動力なのは間違いなかった。
外に吐き出して無理に誰かに助けを乞うのも手だが。
自分一人で向き合い続けるのもまた、私が私らしくあれる事に気づいた。

何時か、引き出しの奥底に仕舞っていたものを取り出して。
そんなこともあったなあ、と笑える時が来れば。
私はきっと変われているんだと信じることができるんだろう。