RECORD
お祭り

「お祭り、楽しかったなぁ……」

「船流しもできたし、おいしいものも食べたし」

「……来年も一緒に、かぁ」
ベッドの上で目を閉じる。
幼馴染が船流しに込めた願いを反芻して。
今日はとくべつ満たされた思いだった。
来年も、その次の年も。一緒にお祭りに行くと言ってくれた。
実際の所、司くんが大学生になってから少し不安だった。
ピアスを開けて、イメチェンをした姿を見て、彼がどこか遠くへ行ってしまうような気がして。
だから、彼が船流しに込めた願いに本当に安心したし嬉しかった。
やっぱり自分たちは昔から変わっていないし、これからも変わらないのだと。
>>1378258
「……その、さっきの写真……
クラスSURFにあげたんだけど……」
あなたの方にも見えるように腕を上げて。
写された画面には『匂う、というよりは、いっぱい、見えるね。』
『彼氏が如実に現れてるね』などの文字……
「や-、えっと……きょ、きょうだいには見えなかったみたい……?」
恥ずかしさから顔は限界まで真っ赤に染まり、
あなたの方を向けないでいる……
>>1378506
「─────────」
飛び込んでくる文字の数々に目を大きく見開いて。
それからあなたの方へ振り向く。
その視線の先に、果実のような色に染まったあなたの顔。
「……スゥーーーーーーッ」
思いっきり目を逸らした……というより背を向けて。
その手で顔を覆っている。熱が籠もってしょうがない、という様子。
>>1379471
「い、や、分かってる、大丈夫。冷静。マジで。
男女揃ってたらそう見えてもおかしくないよな、実態に関わらず。
そんな、実際はどうなんて画面で見ただけじゃ分かんないんだし。
高校生だもんな、気になるし見かけたら突きたくなるよな。
だから、別に、そっちの友達が言ってることは別に変じゃないし。
それを俺達が気にし過ぎたりする必要もないんだ、だよな?
気にしてない、全然気にしてない、ホントに、大丈夫。
面と向かって話すんじゃないから、誤解だって生まれるし。
SNSってそういうもんだし!!」
弁明が長かった。尻すぼみになるあなたと比較すると随分と必死だ。
その癖、全然あなたの方を向きやしない。
執拗な釈明は正しく、それを意識せざるを得なくなっているという証左だった。

「………………」
思い出したらまた恥ずかしくなってきた。
無邪気にきょうだいみたいに見えるかもと思っていた自分が恥ずかしい。
そりゃそうだ。クラスにきょうだいがいるなんて言ったことないし、
男女が並んでいたら恋人に見えてしまうのは仕方のない事なのだ。

「……違うもん。そういうのじゃないもん……」
布団に頭まで埋めて閉じこもる。
思い出すだけで自然と顔が熱くなる。だってすごく恥ずかしい。
本当にそういうのじゃない。
恋とか、そういうのじゃ絶対ない。
だって、恋ってこういう気持ちじゃないと思うから。
恋というのはもっとドキドキして、顔が見れなくて、一緒にいると落ち着かないものでしょう?
私は司くんの顔が見れないなんてめったにないし、一緒にいると落ち着く。できる限り一緒にいたいし、離れたくない。
それは恋愛じゃなくて、家族愛と似たものなんだと思う。
たまにドキドキするのは、ただそういう年頃だから。男の子と一緒にいることをからかわれたら
恥ずかしくなっちゃうのは仕方ないじゃない。きっと、他の人でもこうなる……はず。
だからこれは恋じゃない。いつか司くんに彼女ができて、結婚したりして一緒にいられなくなったら寂しいけど。
できるだけ一緒にいたいし、いろんな所に一緒に行きたいけど、そういうのじゃない。
だって、もし万が一"そういう気持ち"を伝えたとしたら司くんは困った後に断ると思う。
そうしたら、きっと今までの関係じゃいられない。
気まずくて一緒にいられなくなるだろう。
その"変化"が私は怖い。これ以上、彼が離れていくことが怖い。
>>1408727
「ん-?私はねぇ……これからもこのまま、
平穏で楽しい日が続きますようにって。
……司くんの後だと、なんだかちょっと空気読めてないかも」
後ろで手を組んで、やや照れくさそうに笑う。
相手に向けたものではなく、自分の周り全体に込めた願い。
大きな事件も事故も起こらず、落ち着いた日々を過ごしたい、
──願わくば、裏での自分を知られることもなく。
「学校に行って、こうして司くんとお祭りに行ったり
お茶会をしたり……そういうことをこれからも
やっていきたいなって」
だから私は"現状維持"をお願いした。
今の関係のままずっとずっと過ごせるなら、それ以上はもう望まないから。
そしてきっと、裏世界での私を知ってしまったら……その時も、彼は私から離れてしまうんだろう。
隠し事をしていた私を。醜い呪いを宿した私を。気遣って、遠ざけてしまう。
だから……正体は明かせない。
このまま早く怪奇の影響が収まって、何事もなく平穏に終わることを私はずっと願うのだ。



