RECORD

Eno.609 結祈 夜呼の記録

明かされた話

「つまり、僕らは…神秘に対応した子は結祈に養殖されている」

平然とした顔で伽羅はそう告げる。

「秘伝を作り続けようとするとね、裏世界の材料が必要になるだろう?
 だから必要なんだよ、裏世界に対応してる子孫がね」

子の産まれる年月を被るように調整し、男が生まれたら交換して本家に召し上げ一族同士で血を濃くして先祖がえりを図る。
言葉にしてみれば単純だ。

けれどその行為はひどく道徳に反している。

「同族婚は歴史的に見れば廃止されたのはつい最近の話さ……まぁそういう話はさておき。
結祈が欲しているのは初代の先祖返り……鎌鼬の薬だ」

私は初代の鎌鼬の娘に酷似しているらしい。
だから初代と同じ名をつけられたのだと……そういう話は初めて聞く事だった。
結祈家にたまに生まれる隔世遺伝の金髪の男子は初代と同じ鎌鼬だった転ばせ役の記憶を有しているらしい。
それで私が初代に酷似していると赤子の頃からわかっていたのだという。

伽羅は一匹目の転ばせ役の鼬で
私は三匹目の薬を塗る鼬。

私の勘だけで薬を開発できる創薬の才能はそのせいだったのだなと思うとストンと納得がいった。
……考えてみればそうでしょうね、神秘の力でしかないわこんなもの。
今まで不思議に思った事もなかったのがおかしいんだ。

「結祈はずっと君を造る為にそういう事をしてきたんだよ」


「君というか鎌鼬の三人目。君の北摩での仕事は鎌鼬の力を取り戻す事だ。
なんなら先祖そのものに記憶ごと成り代わる事を望まれている、そして僕はそのサポートを命じられている」



「……この科学の時代に、馬鹿らしいだろう?」



雪ノ里製薬が、結祈家が望むのは怪異の力の復活。怪奇を現象から怪異に戻す事。
阿膠おじさんはそれに反対したから裏世界の怪奇を利用して始末される事になったのだと。
……伽羅はそれを匿っていたのだという。

私は将来、創薬師になるのだと信じていた。
北摩に来たのも雪ノ里の力になるように。家族が喜んでくれるように。
私の意思だと思いこんでいたそれは植え付けられた教育だと伽羅は言う。

じゃぁ、私はどうすればいいの?
何を信じて、何に向かって未来を選んでいけばいいの?
……あれ?私今まで何をどうやって選んでた?

呆然とする私に伽羅は告げる。

「僕はその流れを止めたいんだよ。僕らの代で。
信じて欲しい……僕は誓って嘘はついていない」



信じていいの?
ねぇ。

「君は大事な僕の妹なのだから」



私は今何を信じたらいい?