RECORD
Eno.1672 椎名盟芽の記録
断片_1
裏世界、アザーサイドチャペルにて
「わたしは『椎名盟芽』だよ」
あっさり、そう言い放った。
「ただ、こう言うと語弊があるね。せっかく聞いてくれたんだしもうすこしちゃんと言うと、椎名盟芽に『ならなかった』存在かな」
「そもそもは同じ存在だったんだよ、盟芽もわたしも。母親――同じ飼い主の腹の中で。まだ『盟芽』って名前がつけられてなかったころ。ほんとに、妊娠して数ヶ月って段階」
「胎児ネームって知ってるかな? まだお腹の中にいる赤ちゃんを呼びたい、けれど子の名前は決まってない。そんなタイミングでの呼び名さ。母親も父親も、わたしたちのことをあれこれ呼んだんだ。『パピ』『たいちゃん』『ぱたさん』とか」
「『めりこさん』は、両親と違う――たしかおばだったかおじだったか――その人がつけた胎児ネームだよ。それが良くなかった。いや、神秘の力を持つ人間が、相応の思いを込めて、名で存在を定義づけたことがいけなかった。しかも母親も、無自覚でかつ微量だけれど神秘の力を持っていたからね」
「結果。生まれたのが、人間である『椎名盟芽』と、名前をつけられ、神秘の力で育まれたことによって存在として独立してしまった怪奇の『めりこさん』。だから盟芽はあんなにもわたしを同一視するし、変に信頼するし、手放そうとしない。できない。同じ自分だから」
そこで一呼吸置いて。
「説明が長くなったね。興味がないことを聞かせて悪かった」
「わたしは『椎名盟芽』だよ」
あっさり、そう言い放った。
「ただ、こう言うと語弊があるね。せっかく聞いてくれたんだしもうすこしちゃんと言うと、椎名盟芽に『ならなかった』存在かな」
「そもそもは同じ存在だったんだよ、盟芽もわたしも。母親――同じ飼い主の腹の中で。まだ『盟芽』って名前がつけられてなかったころ。ほんとに、妊娠して数ヶ月って段階」
「胎児ネームって知ってるかな? まだお腹の中にいる赤ちゃんを呼びたい、けれど子の名前は決まってない。そんなタイミングでの呼び名さ。母親も父親も、わたしたちのことをあれこれ呼んだんだ。『パピ』『たいちゃん』『ぱたさん』とか」
「『めりこさん』は、両親と違う――たしかおばだったかおじだったか――その人がつけた胎児ネームだよ。それが良くなかった。いや、神秘の力を持つ人間が、相応の思いを込めて、名で存在を定義づけたことがいけなかった。しかも母親も、無自覚でかつ微量だけれど神秘の力を持っていたからね」
「結果。生まれたのが、人間である『椎名盟芽』と、名前をつけられ、神秘の力で育まれたことによって存在として独立してしまった怪奇の『めりこさん』。だから盟芽はあんなにもわたしを同一視するし、変に信頼するし、手放そうとしない。できない。同じ自分だから」
そこで一呼吸置いて。
「説明が長くなったね。興味がないことを聞かせて悪かった」