RECORD
Eno.32 不藤識の記録
record. 『三原則』
人間を傷つけないこと。
これに反さない限り、人間に従うこと。
これに反さない限り、自分を守ること。
というのが、某文学作品中にて記された三原則であるのだが。
例えばロボットの評価がこれに基づくならば、不藤識はロボットにすら満たない存在だということになる。
無論、従う相手・内容は選別するため、完全にそうだというわけではない。
知性を有する有機生命体であり、自我が存在する他、ホモ・サピエンスから連なる様々な性質を持ち合わせている様は、紛れもなく人間である。
ただし。
・人に拳を向けないこと
・人にお願いされたら、誰かを困らせる類のものでなければ凡そ断らないこと。
この”自分ルール”に加え、大切なものについて優先順位を設け、自分とその他を度外視する精神性。これらを併せ持つ様は、正に出来損ないのロボットのようだと評する他にない。
そんな中で課せられた課題は、「自分という個の安全、その優先順位を最上位に再定義しろ」というもの。裏世界に身を投じる中、この課題を達成するのは至難ではないか。
例えば、家族がいて、これの優先順位を自身と同じく最上位に置いたとする。世間一般の価値観であれば、主にそうなるだろう。己の子であれば猶更。
これを、不藤識の立場に置き換える。
家族を恋人に置き換えた場合、その恋人は常日頃から積極的に裏世界に身を投じ、神秘との接触を図ろうとしているのだが。
これを自身と同位置に置いた場合、自身も必然的に裏世界に身を投じる必要があり、そうなれば自身という個の安全は保障できなくなる。
己が身を置く世界の割合は、表が半分もあればいい方だ。
裏に生まれて裏に生きる、それが不藤識という存在だ。
元は、”不知火京介”が生き続けるためのスペアだった存在だ。
故にこそ、最初は長生きする予定など一切なかったのに。
唯一存在していた願いは、『誰にも見つからないまま消えたくない』というもの。
それから、自分もこの世界で生き続けたいと願った理由は、『好きな人の普通を守り続けたい』というもの。
問題なのは、いずれの願いの中にも、己のみに由来する生への執着が一切ないこと。
これを解決しない限り、生存権を譲り受けることはできない。
残り一年あればいい方の寿命。
自我を出したのは高校2年生、17歳の誕生日を前にしたある日。
16歳までに培った偏見をひっくり返すような感情を育む必要があって。
それには、時間が足りなくて。

ふと、口から零れ落ちる本心からくる恨み節。
――この瞬間、0と100で構成された世界に、マイナスが生まれた。
これに反さない限り、人間に従うこと。
これに反さない限り、自分を守ること。
というのが、某文学作品中にて記された三原則であるのだが。
例えばロボットの評価がこれに基づくならば、不藤識はロボットにすら満たない存在だということになる。
無論、従う相手・内容は選別するため、完全にそうだというわけではない。
知性を有する有機生命体であり、自我が存在する他、ホモ・サピエンスから連なる様々な性質を持ち合わせている様は、紛れもなく人間である。
ただし。
・人に拳を向けないこと
・人にお願いされたら、誰かを困らせる類のものでなければ凡そ断らないこと。
この”自分ルール”に加え、大切なものについて優先順位を設け、自分とその他を度外視する精神性。これらを併せ持つ様は、正に出来損ないのロボットのようだと評する他にない。
そんな中で課せられた課題は、「自分という個の安全、その優先順位を最上位に再定義しろ」というもの。裏世界に身を投じる中、この課題を達成するのは至難ではないか。
例えば、家族がいて、これの優先順位を自身と同じく最上位に置いたとする。世間一般の価値観であれば、主にそうなるだろう。己の子であれば猶更。
これを、不藤識の立場に置き換える。
家族を恋人に置き換えた場合、その恋人は常日頃から積極的に裏世界に身を投じ、神秘との接触を図ろうとしているのだが。
これを自身と同位置に置いた場合、自身も必然的に裏世界に身を投じる必要があり、そうなれば自身という個の安全は保障できなくなる。
己が身を置く世界の割合は、表が半分もあればいい方だ。
裏に生まれて裏に生きる、それが不藤識という存在だ。
元は、”不知火京介”が生き続けるためのスペアだった存在だ。
故にこそ、最初は長生きする予定など一切なかったのに。
唯一存在していた願いは、『誰にも見つからないまま消えたくない』というもの。
それから、自分もこの世界で生き続けたいと願った理由は、『好きな人の普通を守り続けたい』というもの。
問題なのは、いずれの願いの中にも、己のみに由来する生への執着が一切ないこと。
これを解決しない限り、生存権を譲り受けることはできない。
残り一年あればいい方の寿命。
自我を出したのは高校2年生、17歳の誕生日を前にしたある日。
16歳までに培った偏見をひっくり返すような感情を育む必要があって。
それには、時間が足りなくて。
「……恨むぞ、白亜」
ふと、口から零れ落ちる本心からくる恨み節。
――この瞬間、0と100で構成された世界に、マイナスが生まれた。