RECORD

Eno.232 月影誠の記録

6/11(~6/13)

ラウンジを出た時点では雨降ってなかったんだよ。
流石に雨降ってる中ザリガニ釣りを強行するほど頭おかしいやつじゃないんだよ。

朝のザリガニ釣りしてたら降ってきてどうにもならなかったから
そのまま強行しただけで。


というわけでびっしゃびしゃでの登校になった。タオルで拭いたけど普通に冷えた。
どう考えてもジャージを取り出す判断が遅かった(というか言われるまで選択肢になかった)。

そんなあり様だったからアヤメが一緒に帰ることを提案してくれた。
相合傘になるけどいいのか? って聞いたらそれでもいいよ、と言ってくれたので
素直に厚意に甘えることにした。


そこで、他人が怖いかどうかの話になって。
俺が怖いのは、いつも自分自身で。
自分が父親を一度殺そうとしかけた話をした。
アヤメは自分を復讐鬼だと言っていたから、自分もこの話をしておかないとと思った。
それに、ずっと黙ったまま自分に付き合わせるのも申し訳なくて。

拒絶されない確信は、どこかにあったんだと思う。
どこかで自分とアヤメを比べて。自分の方がやったことが軽いと思って。
彼女にとっては些細な事に映るのだろうな、と思っていたのだろうな。
本当に自分は嫌なやつだ。


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アヤメ [Eno.763] 2025-06-11 19:28:51 No.1685238

>>1683080
「────……嫌なやつなんかじゃないですよ」

「だって貴方は、それを当然だなんて思っていない」

なんでだろう、歯止めが効かない。
まずいまずいと言い聞かせているのに、口が勝手に動く。

「私は、嫌なことをしたらやり返されて当然だと考えます。
 人を貶めたのなら、殺されかけたって文句は言えない。
 法律に胡座をかいて、貴方のような人に酷いことをする人間は
 痛い目を見なきゃ分からないんですよ」

足が止まる。傘から身体が外れ、雨に当たる。
不思議と雨が強まったような、冷たい空気が漂う。
衝動に苦しむ貴方が脳裏に過る。貴方に勉強不条理を強いた知らぬ顔を想起する。
ふつふつと湧き上がる復讐心。殺してしまえという衝動。怒り。恨み。憎悪。


「……誠さんは優しすぎます」

「自分に酷いことをして、トラウマまで植え付けた相手を、
 ただ"嫌う"だけで済ませるなんて」

だめだ、それ以上は。
言ったら嫌われる。おかしいと思われる。
こんな事を言いたいんじゃない。なのに……
彼の受けた境遇に、辿ってしまった末路に、
底知れない怒りを感じている。

「…………ごめんなさい、私」

「……私」

……やっぱり、私は。
今の感情を抑えられない、弱い私が嫌いだ。

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[Eno.232] 2025-06-11 20:31:43 No.1690503

>>1685238
「――……」

身体が離れて、あなたが雨に晒される。
立ち止まって振り返って……傘を差し出しに戻ろうとして。
足が止まった。

強い怒りや恨みを露わにしている。
自分の言葉を受けて……あなたは自身の父を殺すことを、肯定している。
一度人を殺してしまえば、常に人を殺すという選択肢が現れる話は
聞いたことがある。

そして、ある人との会話。
壊れた心は、元には戻らないのだと。


「……その日を境にさ。
 父親は、俺を恐ろしいものを見るような目で
 見てくるようになった。
 母親もそう。兄貴は何も変わらなかったけれど。
 変わらず成績主義者だし、勉強の強制は続いたけど。
 けれど、どこか怯えていて、一歩引いている」

二度と目が合わなくなった

「……だから、なんだろうな。
 いつだって逃げ出せる。殺すことができる。
 だから今更、父親も母親も兄貴もどうでもよくて。
 再びその日と同じことが起きることを、怯えている


そこまで言って。
傘を閉じて、あなたに近づいた。

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[Eno.232] 2025-06-11 20:33:04 No.1690703

>>1685238
「ごめんね、女の子にこんな顔させちゃった」
「あ~あ、俺はやっぱり優しくないや」

そうして、嫌がられなければ。
いつかの湖畔のときと、同じように。
けれど、あのときとは違う優しい力で。

あなたを、抱き締めようとする。

せっかく気を遣ってくれたのに、完全に仇で返してしまう。
だけど、あなたと自分は似た者同士。
許される傘をさすことを願っていないだろうから、許されない傘を閉じることを肯定する。


「間違ってたっていいじゃないか。
 この世の中綺麗ごとだけでは生きていけないんだから。

 自分が嫌いで嫌いで、どうしようもなくても。
 道は続いていく。歩いていくんだから、俺達は」

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―― 傘から出てしまったときに。
傘をさすのは違うなと思った。引き込むのも違うと思った。

周囲から見れば、俺達は『異常』だ。
教室に行けなくなったあの日を経て、未だにクラス内で孤立していない理由を考えた。
『異常』として片付けられずに比較的受け入れられる理由を。

思ったより色んな人に裏の顔がバレた。
それは、思ったより『人とは異なる神秘に関与した人人』が多いということだ。
だから、俺たちは受け入れられて、日常を築くことができる。


ここに来る前は、自分以外のクラスメイトは誰一人として神秘に触れていなかった。
だから、裏側をずっとずっと隠し続けた。
ここでは、俺達の事情がある程度話せて、人とは異なることを受け入れられる。

だけど、似た者同士の俺達は。
人を殺しかけてトラウマを抱く者と、人を殺し続けて麻痺した者と。
それは『受け入れられるべきでない』と分かっていて。
そこから『手を伸ばして救い出される』ことを願っているとは違うだろう、と。
だって、俺はこの最悪な趣味を否定し手放す気はない。
アヤメだて、復讐を諦めるつもりはない。


だから、だ。
だから、傘をさすことは違うと思ったんだ。



もしもそこで、傘をさして。
彼女を理解せずに、一般的で模範解答を突きつけていれば。
感情に寄り添わず、合理的な判断を下していれば。
アヤメを……ちゃんと、守れただろうに。
彼女まで俺に巻き込むことはなかっただろうに。
こうやって付き合わされて風邪を引くこともなかっただろうに。



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クズヤマ [Eno.225] 2025-06-12 19:00:36 No.1761689

>>1759370
「敢えて思い詰めようって言うなら別に止めないけどね」

 鍋が沸騰してきたら、火を弱めた。
 あれば、お玉か何かで掻き混ぜる。焦げ付かない様に。

「そう。彼女に寄り添いたいと思ったんだ」

 零された幾つもの後悔の言葉を、否定も肯定もせずに聞いている。
 好きなだけ後悔すると良いし、嘘を吐いたって良い。
 僕は聞く以外の事を何もしない。

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[Eno.232] 2025-06-12 19:16:27 No.1762866

>>1761689
「……価値観や悩み方が似ているから。
 つい、近づきすぎちゃった。
 近づいたらどうなるか……よく分かってるのに」

「苦しめるか、傷つけるしか、ないんだから」


そこまでいって、深く息を吐いた。
熱を持っていても、今の自分では分からない。

「多分、葛山だったら分かると思うんだけど」
「人を傷つけたくないから。最悪な趣味がいつ人に向くか分からないから。
 俺は人と距離を取ろうとしてるんだよ」


その趣味が今回、アヤメに向いたわけじゃないけれど。
個人的に、あなたに親近感を抱いているから話した。

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クズヤマ [Eno.225] 2025-06-12 19:48:14 No.1765280

>>1762866
「まあ、うん。気持ちは分からんでもない」
「ある程度、距離は取っておいた方が良いもんな」

 距離が近い程やらかす可能性が高くなる。
 相手も自分も傷付く羽目になりかねない。

「それでうっかり近付き過ぎたか……。
 そりゃ退っ引きならない状況だね。あーあ」

 一度距離が縮まってしまったら、急に離れる訳にもいかないんだよな。
 難しい話だ、と思い乍ら鍋の中で溶けていく米を眺めた。

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[Eno.232] 2025-06-12 21:02:59 No.1771378

>>1770150
「……俺は」
「そんなに、無茶苦茶を言ったつもりはないよ」


足長おじさんなんて大層なものになりたいわけではない。
ただ、自分の周囲の人間が穏やかな日常を過ごしてくれたら
それでいいだけだ。
物語で言うところのモブや、お助けキャラくらいで丁度いいんだ。

「……特に」
「何もしなかったら、何も起きないだろ」

「今のままを保つつもり。
 お互いに友達関係で、深い関係じゃないし。
 アヤメが皆と仲良くできるように、支えていくつもり」

「……近づきすぎないように、気をつけて」


自嘲気味に笑った。
次はこんな失態をしない。そう言い聞かせるように。

「ところでそれ何作ってんの? 米糊? 障子でも貼るの?」

突然トンチキ発言が出てきたな。

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…………分かってるんだよ。
踏み込みすぎたことくらい。

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クズヤマ [Eno.225] 2025-06-12 21:41:03 No.1775739

>>1771378
「本当に完全に何もしなかったらな。
 でも、認識されない様に手助けするのは大分難しいって」

 声を上げれば見えてしまうのだ。
 モブでもエキストラでもない、狼少年の姿がさ。

「まあ、適切な距離保てる様に頑張って」


 テーブルかどこかに器とスプーンを置く。。

「え? 嘘。若しかして、粥という料理をご存じない……?」

「ここ置いとくから、腐らない内に食べた方が良い。
 流石に断食2日目突入はヤバい」

 そう言って、使った鍋等を洗っておいた。

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実感している。
振りほどけない距離に居て。
線引きして距離を取ろうにも間に合わない場所に居て。
ここで身を翻して去ることに、強い強い嫌悪感と罪悪感を感じている。
知りすぎたのだ、彼女のことを。


「俺にはクロがいて。クロと共に居られたら。
 それでいいって、ずっとずっと思ってるだろ」



その心に偽りはない。
……偽りはないけれど、裏世界に身を投げることもできずにいて。
優しく在りたいと思うのに、あるべき優しさを貫けなくて。
何から何まで、自分は中途半端で。





―― 飢えた狼が、遠くで鳴いている。