RECORD

Eno.1672 椎名盟芽の記録

断片 2

裏世界、モノレールの車両内にて

ちゃんと聞いてくれて優しいなぁ、と言おうとしてやめる。これ以上機嫌を損ねると面倒だと判断したのだろう。

「わたしはねぇ」笑顔のまま続ける。「困ってるんだ」

「本来の有り様、っていうのは『椎名盟芽』だけが存在すること。けど、わたしは『椎名盟芽』になるはずだった存在だ。つまり、『椎名盟芽」が正しくあるために不可欠なピースといえる」

また長くなったね、と言葉を区切り。

「わたしは盟芽と同一の存在になることで存在を収めたい。『椎名盟芽」を確立させたい。もしくは消えることで『椎名盟芽』は残ったこれであると証明したい。飲みこみたいと消えてしまいたい。勝手にしたいと尊重したい。この感情が混在してる」

わざとらしく肩をすくめた。

「早く楽になりたい」

「自分として生きたい」

「自分として死なせてくれ」

「終わった生を生きたくない、始まらなかった死を死にたくない」


「あはは。どうすればいいと思う?」





生まれて


繋がれて


生きるしかなく


ただ生きて



そうあれかしと


歪なまま信仰され


返すしかなく



成り果て







ゆえに救った


ゆえに生きながらえさせた


ゆえに繋いだ



ゆえに怪奇に


成り果て







生きるしかなく



死にもできず



生かしてはもらえず



死ぬしかなく






生きていて、死んでいて、生きていなくて、死んでいない。それは、人間でなく――怪奇だろう。そう分類するしかない。