RECORD

Eno.77 磯向井 利慕の記録

❖回顧録

「………へぇ。今日って父の日なんだ」

「ま、縁の無い日だわな」


(着信音)


げぇ!!クレーさんじゃん……」

「うわ…… なんで電話なんかしに来るんだよ。
 ガチで勘弁しろよ……嫌すぎ……」

「ただ、それでまた母さんに怒られるのも嫌だしなぁ……
 はあ……………」


『……あっ! リシタ君!
 今日は出てくれたんだね。
 良かった。元気にしてるか、声聞きたくて――』


「要件。早くしてください。
 俺、暇じゃないんで」


『………そうだよね、ゴメン』

『僕が誘った管理局。上手くやってる?』


「ああ。それなんですけど」

「俺、カレントに入ったんで」


『……リシタ君。僕の事が信用ならないのは分かってる。本当に申し訳ない』

『けど、君を守るんだったら、あの機関が良いって――』


「だったら、なんでこの力が神秘だって、最初から説明してくれなかったんですか?」

「守ってくれる機関だけ言って、その裏の存在の事を話してくれなかったんですか?」

「おかしいですよね? 説明もなく守るだなんて」

「ああ。それとも、10年の禁固刑に恐れたんですか?」


『リシタ君……事情を知ってるなら、分かるだろう。
 むやみにこれらの事を話してはいけないって』


「じゃあ、結局母さんと結婚したのも俺を匿うためって事ですか?
 馬鹿馬鹿しい」


『リシタ君! それは何度も違うと説明しただろう』


「何が違うんですか?
 40代子持ちのワケ有り物件、理由も無かったら手籠めにしませんよね?」


『利恵さんの酷く暗い顔が辛かった。
 助けてあげたかったんだ。その気持は本当なんだよ』

『君が神秘を持ってることを知ったのはたまたまで』


「ダウト」

「クレーさんは知ってるんでしょ? あの病院の医療事故」

「“神秘管理局の人間”だっていうなら、さぁ」


『リシタ君。たまたまなんだ』

『君が与えられてしまった力は、いつか君自身を苦しめる』

『だから、話を』


赤の他人が父親ヅラすんなよ」



(通話を勝手に切る)



「はあ……だから嫌なんだよ」