RECORD

Eno.623 飯田飯太の記録

【前日譚】神秘を覗くとき、神秘もまた…【side:

「さて、今日こそカレントネットワークスの隔離サーバーを見ていきますか」


部屋に響く独り言、パソコンの前でカタカタとキーボードを叩きながら画面に映る文字列を眺めていく。
天下のカレントネットワークスのセキュリティは伊達ではない、二重三重に張り巡らされた防壁と物理的隔離による鉄壁のセキュリティは一インフラ企業にしては異常なほど厳重だった。
僕みたいなハッカーに狙われやすいのか、セキュリティ担当者の趣味なのかはわからないが、ここ数か月はこの厳重なセキュリティをいかに突破するかに頭を悩まされていたのだった。

「お、情報きちんと抜けてる…よし…!」


今回の標的は、物理的にインターネットから隔離されていてリアルタイムでのハッキングを行うことはほぼ不可能であった。そこで、あらかじめ隔離サーバーにアクセスする人物の端末に接続したサーバー内の情報をコピーするマルウェアを感染させることにしたのだが…お目当ての情報に感染させた端末がアクセスできたようだ。

「さて、何々…北摩市○○区△丁目で発生した、カッパ型怪異による破壊行為は当該怪異の処理により解決済み。被害規模は軽微、カバーストーリーとして水道管の破裂を選択。…何だこれ」


神秘事案報告書と書かれたそのファイルには、最近起きた事故や事件があたかも怪異と呼ばれる者たちによって引き起こされている事件であったかのように書かれていた。
馬鹿げている、そう思うと同時に情報の出所が厳重にセキュリティが施された隔離サーバーであることを思い出す。

「いや、そんなわけないか。大方ハッキング対策の偽ファイルか何かだろ、情報の吸い方を見直すか…?いや、もしかしたらハッキングがバレてるかもしれないししばらくは様子見するか…」


しかし、何日過ぎてもハッキングによる家宅捜査は来ることはなく、閲覧できる謎の報告書は増えるばかりであった。
奇妙に感じながらも、当初の目標を達成したこともあってか、報告書への興味も薄れ、内容についても不思議と気にならなくなっていた。

あの日までは。