RECORD

Eno.26 朔 初の記録

CASE:9

──夏の始まりとともに、私たちの部活動も幕を開けるのだった。

体育館で鳴るシューズとラケットの音からは、まだ程遠い一年だった。
とにかく基礎のトレーニング。
そればかりをやらされていた。

と、いうのも、まあ、想像することではあった。
6年生の時想像した、体育会系の部活そのもののイメージ、そのままだった。
ひたすら走る。体力をつける。
動ける体にしていく。

それが嫌だったから、あんまり入りたくなかったのだけども。
まあ、基礎練はきっとどの部活でもおんなじだった。
クラスの部活話は、だいたい基礎練に染め上がっていた訳だから。

もう一つ理由を告げるなら。
体育館のスペースが、取れる日もあれば、取れない日もあった。
その使わせてもらえるスペースは当然、上級生が優先となる。
ラケットを振る、簡易的な試合をする。
そういうのは、当然、大会に出るような先輩たちに回されるのである。
物事には優先順位がある。
私たちは、当然、したっぱな訳だった。

ラケットは持たせてもらえない。

と、いうわけではなかったが。
握り方と、ひたすら素振り。
羽を撃つことは、まだなかった。
そして、ラケットを持つ時間よりも、当然のように走り込みの方が長い。
1時間以上の走り込み。
一体、何をやってるんだか。
沈む夕日を眺めて、息を荒くさせながら。
空気を必死に取り込みながら。
思考は暗がりに酩酊していた。

ちら、と友人とあの子を横目に見る。
友人は案外についていけているようで、先頭ぎみ、ペースを崩さず、息も乱さずに走っていた。
普段は可愛いものが好きでやかましいのだけど。
スペックは案外高くて、それがすごいと感じることもあるのだった。

対して、あの子。
体力が決してないわけではない。
そしておっつけてないわけでもない。
が、しかし。

私より後方にいるのが、チラと首を回せば見えた。
私より必死に息を弾ませて、私よりずっと小さな体躯で。
一番後ろ、ついてきてくれる先輩に励まされれば、その乱れた息とフォームが直っていく。
翡翠の目は、わりと生き生きとしていた。

──案外。


根性はあるな、って。

思ったのは、その時だった。