RECORD

Eno.424 甘露 進の記録

オレしか知らないし無双もできない件

未知の設計図
この世界では未知の言語と技術が用いられた設計図。
進曰く、見られると小っ恥ずかしくなる。




これを書いたのはオレだ。


現代社会では再現不可能な技術だから、オレが書けるのはこの現実離れした設計図まで。
そして今のオレは、たとえ技術がそこに追い付いていたとしても、
この紙ぺらを現実にするだけの知識と力を持たない工学部の大学一年生だ。
ガワだけなら何とかなるかもしれないけどな。

ファンタジー世界の空想、よくできた作中資料としては評価されるかもしれねえ。

けどそんな事されたらバチバチにキレる自信がある。

だってこれは、空想イマジナリーなんかじゃない。
オレの記憶に基づいて作られた現実だから。

オレは、この世界でオレだけが、
この現実を、覚えていたとしても。


これからここに記すこと。
18歳の6月現在のオレは、誰にも話す気がない。けれど確かにそこにあって、オレがそれを覚えていたいから、
ここに書いた上で、しまって・・・・おく。


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オレには『甘露 進』が生まれる、その一周前の記憶がある。

いわゆる『前世』の記憶だ。
いわゆる『異世界』の記憶だ。


先んじて言っておくと(※誰に?言う予定はない。)
今のオレは甘露 進アマツユ ススム、その自覚がある。
ただ18年の記憶のさらに後ろに、
確かに生きていた記憶がある、そんな感覚だ。
オレは一周前も双子で、そこにはちゃんと、兄貴もいた。
そういうわけなんで、双子の前世は結ばれず心中した恋人とかいうやつは一切否定することにしている。


小さい頃はそれを人に話してはいろいろと勘違いされ、大人の大きな手で嗜められた。
まあ、前世で好きだったものは今でも好きだからそれは誤魔化したり隠したりする気はねー。
カレーとか、戦闘ロボとか、機械いじりとか。それは『甘露 進アマツユ ススム好きなものだから、そこに嘘つく理由はない。


年齢を重ねるごとに人に話さなくなっていった。
『もしかして覚えているんじゃないか』と思える友人や兄貴の言動を見て、一周前の記憶を揺さぶることは何度かあった。
けれどまるでおとぎ話なんで、ハッキリと思い出されることはなかった。
久しぶりに会ったって頭打ったって核心的なこと言ってみたってそんなもん世の中、
そうドラマチックにはいかねーんだよ。

でも件の友達とは、今も年賀状を送り合う関係だ。年下の、でも慕うような、いい友達だから。



そして、北摩市に来てからは全く言わなくなった。
『神秘』の存在。
この世界にも科学で説明できないナニカ、が確かにそこにある事を、オレは知ってしまった。
しかも、知られてはいけない類のモノだった。
神秘たちはとても儚いことに、普遍化してしまえば弱り、消えてしまう。

……この世界では、今や『異世界転生』というネタが普遍的に存在している。アニメ、漫画、小説、なんでもある。
なんでもあって、それを見る人はその空想イマジナリーに思いを馳せ、頭の中で形作っている。
多くの人の中で異世界だとか前世とかそんなもんは、物語の中の出来事だ。
裏世界アザーサイドを知る人間にとっても、どこまでが現実でどこまでが空想なのか、自分で見たものじゃないと判断できないだろう。

そんな世界で、こんな話を、口にしたら?
そして少しでも、冗談だと笑われたら?

「ひと一人が神秘を解釈しようとした所で、そんな簡単に消えるものだろうか」
と議論したことがある。
オレも、その話にはいくらか納得はしてる。

けれど、恐ろしくて恐ろしくて。
この『現実』が完全な『空想』と解釈された時、
この記憶はどうなるんだ?
そう、オレにとっては現実の延長線上でも、
この世界には『神秘』と扱われるもの。


オレの記憶は。
あいつの中にある事実しんぴの欠片は。


*****

オレは小さなコクピットの中に座っていて、
その周りには水が管を通る音が絶え間なく聞こえている。
透き通るような・・・・・・・指がぼんやりと発光するパネルに触れれば、
機体の外の世界は高速で動き始めた。


*****


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さて、この記録をしまうとするか。
この『ペン』と『ノート』、どこにしまうかって?
……それは、オレの異能でさえ知らない。


1、2……