RECORD

Eno.427 大狼拾希の記録

0/5:累の海-未-

不意に襲い来る不調。

熱を帯びている感覚とは違う。
まるで体の中に知らない巨大な何かが這い回るような不快感。

階段を持つ手すりを掴みそこねて前のめりに倒れる。
瞬時に強化される感覚。
そこでようやく頭は熱を帯び、視界はクリアになる。だが―――

傷を負わないよう、階段の1段1段を受け身を取りながら転がり落ちる。

途中からはいっそのこと勢いをつけて身体を弾き飛ばしてショートカットもする。
そうでもし少しでも落ちる時間を巻かないと脳がオーバーヒートしてしまう。

一番下。1階まで辿り着くと何とか体を起こし、
朦朧とする意識の中エレベーターまで何とか歩いていく。

不本意ながらエレベーターを使う機会が訪れてしまったことに歯噛みしつつも、
いや流石にこの状況じゃ仕方ないでしょ。と、頭の中で見知らぬ声が囁いているのを感じていた。

・・・・・・。


暗い部屋の中。

誰かが■を見下ろしている。

ああ、カーテンの閉じた窓から薄っすらと朝日が差し込んでいる。
教室へ行かなければ。

しかし身体は動かない。体の中で何かが蠢いている。
それはまるでさざなみのように押し寄せ…引いていかない。
押し流される。ずっとずっとずっと押し流されて、辿り着きたそこは…

「さて、少し早すぎるけど…どうしよっか?キミに目覚める意志があるのなら、今すぐにでも僕はキミを助けられる」





「まだ早いとでも?何言ってるのさ。今こうしてる間にも、向こうじゃ縺ゅ?蟄舌d螯ケ縺後く繝溘?縺薙→繧貞セ?▲縺ヲ縺?k繧薙□繧医?」





大きな赤い月が見下ろしている海原。
そこに立つ獣の耳と尾を持つ男が■を見て、呆れたように微笑んだ。

「……。置いては行けないって?拾っていくつもりかい?マジで言ってる?…ははは。そういう奴だよね、キミは…いいよ。好きにすると良い。……もう手遅れだ。こんなチャンス、この先もう無いとは思うから……精々頑張ってね」



赤い月の裏側から、ヌッと大きな何かが顔を出す。
それは黒い黒い身体に2つ浮かんだ青い瞳を光らせて、
大きな口を開いて月ごと世界を飲み込んだ。


・・・・・・。


頭が痛い。
身体に感じる不調はそれだけ。

頭が痛い。
なんというか…内部からくるあの痛みではなく、
何かで殴られたかのようなあの痛みでもなく、
複数の何かで刺されているような………そう、まるで何かに噛みつかれているかのような…

「………」



目を開けると、青い2つの瞳と目が合った。
ぎりぎり一般的な範囲に入るのだろうが、かなり大きな黒猫が…頭に齧り付いていた。
今の気持ちを何と表せばいいかはわからないが、
目覚めの中では最悪の部類に入ることはきっと間違いないだろう。