RECORD

Eno.448 藤 清士郎の記録

退屈

自分の人生において。
自分の人生を苦痛だと思ったことは一度もない。

孤独を感じたこともなかったし、劣等感にさいなまれることもなかった。
ただ。
暇だな、と感じることは、よくある。
色々な暇つぶしをしてきたつもりだけど、楽しいことはそう多くはなかった。

「……………」

部屋の、天井の、染みを眺めた。
その数を数えてみる。
あまり楽しくない。
暇はつぶれていく。


『おれだけなんにもなかったんですよね』
劣等感もなかった。
しょうがないことだったから。

『普通でしたから。別におれは穿った目で見られることもありませんし、普通に家族として育ちましたから』

出来やしない物はしょうがない事だと育まれた。

役立たずは、役立たずとして育ててもらえなかった。



此処にいるのが自分じゃない方が、きっといい。
それだけの意味しかない。
宝くじが当たったらな、とか。
もう少し背が伸びてくれたらよかったな、とか。
明日は晴れたらいいな、とか。

良く思う。
良く思うから、それ位の意味だ。
劣等感をもとに。自己否定をもとに。
そうだったら、きっと話は違ったんだろうな。


腐ってしまっていた方がまだましだったんだろう。
腐ることも知らず、かといって実ることもない。
そこには過去も未来もきっとあるけれど。
過去にこだわる理由も、未来に進む理由も。

別にないか。


自分に価値がないことを。
自分が無意味なことを。

どうして悲しく思う必要があるんだろう。
おれは人間ですし。
人間は人間として生きられるなら十分じゃあないでしょうか。

普通じゃない家に生まれた普通の子。

……。
ふふ。


欠伸を零した。


「……………」

眠いな暇だな