RECORD

Eno.11 射手瀧 來々の記録

夕陽に染まるのは、足元から

 
──『心象エネルギー哲学』。
それはガイダンスを受けた中で、わたしが最も適性を見込まれた授業。

膂力や器用さが無くても、内に秘める神秘が小さくても…
"場"の神秘を借りることで、意志を通して放つことができる。…んですって。

もちろん正直、最初はピンときてなかったけど。
お試しで、って"場"の神秘に『お願い』するように念じてみたら…
それが案外、こころよく貸してくれるみたい。


それも…想像していたよりも、ずっとずっと大きな力を。


わたしたち、迷える子羊の割にあまり迷わずに済んだんだね、なんて…
ガイダンスに同席した、似た境遇の子たちと話したりして。

みんなが少しだけ自信を得たような顔つきで
授業のあとお別れして、それぞれ帰路についたんでしたね。




「……うん♪」


あれから1ヶ月…いや、2ヶ月ほど経とうとして。
学んだ異術の扱いもいくらか手慣れてきたところ。

わたしは、ガイダンスで適性を見込まれたとおり…
神秘と触れ合うのがすこし、得意…なんてことがあるらしくて。

徐々に神秘が視えるように…肌で感じ取れるようになってくると。
それこそ子供みたいに、初めて自転車に乗れたときのように……
夢中で、許された範囲を駆け回っちゃいました。


──…自分にできることを見つけられたのが、無性に嬉しくて。



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「──これから同級生として、仲良くしてこ~ね。」

「そんで射手瀧さんはなんで人文学部来たん?私はね~え…」


「……。わあ~…素敵!将来を見据えて…?──」


わたしが人文学部を選んだ理由なんてたったひとつ。
文系全学部を受けて、人文学部しか受からなかったから。



「──ねえ、今週末さ、水着見に行かない?夏に先駆けて!
 かわいいの見してビビらせたるんよ。そうそう、サークルの先輩に!」


「あ、いいですねいいですね!
 何度も一緒に行けるように、いっぱい買っちゃいましょう♪なんて♡」


わたしは水着なんていらないから…本当に横から見てるだけだけど。
だって子供の頃からずっと鈍臭くて、泳げませんものね。



「──どした?まじ久しぶりじゃん!
 てか生きててよかった~。ふわふわしてっから心配だし!」


「久しぶりって、せいぜい数日程度ですけれど。
 それでも、ええ…ご心配をおかけしまして。」


年下の子にも心配してるだなんて言われる始末。
これでも大人であろうとは、努力しているつもりなんです。




──昔から、得意なことなんてひとつもなくて。
自炊するにしても火だけは絶対に使うなよ、なんて念押しされていて。

ずっとずっと、なにもかもが下手くそな自分のことがコンプレックスだった。


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そんな中、表で道に迷ったとき、助けてもらった少年と
裏で再会してお話する機会があって…

「お姉さんは……楽しいですか?いま。」


問いかけの中で、わたしは強く、反感を覚えてしまった。

「──…。
 ポジティブな気持ちで臨んでいるのは、間違いないと思います。」


裏での活動はあくまで民間協力、そう、仕事だからって…
何度も何度も、忘れそうになる度に自分に言い聞かせてきていたのに。



「……なんでいるの?」


それとはまた別の日、
これは裏の"パトロール"中に偶然出会えた、表のお友だちからの言葉。

それは今まさに、徘徊する怪奇の纏う、危険な神秘を破裂させていたところ。
そんなこと、見てもらえれば直ぐわかってもらえるはずなのに、と。



「なんで、もなにも。」


「こちらでは…うふふ。お役に立てますよ♪わたし。」




べつに、楽しんでいるわけじゃあないんですよ。

ええ、決して。