RECORD
Eno.223 宇迦盧 司の記録
禊祓
道場に、宇迦盧以外の人間が入り浸るようになってそれなりの月日が経った。
数えてみれば約一ヶ月程度、だろうか。
そのことに、特に家族は特に難色を示したりしていないし、何なら母さんは偶に二人分のお茶を持ってきてくれたりもする。
しかし、それはそれとして珍しいことでもあった。
宇迦盧邸にある道場は立派だが、特に外部に向けて教室や何かで開けているわけではない。
使用するのは基本的に家族だけという、閉じた場所なのだ。
それが少し、勿体なく感じる時もあった。
昔、その理由を父に尋ねた事がある。確か、共に鍛錬を積んでいた時のこと。
自分よりもずっと綺麗な技や呼吸を扱う当時の父に、道場を広く開けたりしないのか、と。
「お父さんはあまり、教えるのが上手じゃないからなあ……。
司は上達が早かったけど、それは司の才能と努力の賜物だ」
「だからお父さんの代ではこれで良いかな。子に継がせるという役目は果たした」
「でももし、司がやりたいと思うなら。司が家を継いだ時に道場の門戸を開けても良い。
その時はお父さんも司のことを先生って呼ぼうか。将来が楽しみだ。よっ、司先生!」
その時はそのまま、弄られっぱなしで話が終わってしまった。
ただ最近、大学での勉強や神秘との関わりを経て、少し考えることがある。
宇迦盧の家が継いできた、その技の意味を。
曰く。合気道というものの一番古い原型を辿れば、それは所謂"禊行"であるらしい。
穢れを祓い、心身を清め、神と通じるための術。
もし宇迦盧の技に込められた意味もそれだったなら、子の継がせる意味も納得がいく。
道場が"お宮"と同じ建物にある理由も、同様に。
だから、という訳でもないけれど。
彼女には結局、単なる柔軟と体力作り程度しか教えていない。
それ以上が必要になることはないだろうから、多分ずっとこのまま。
けれど同時に、自分がこの行を辞めることも、恐らくない。
これは変わらぬ日々に埋没する、細やかな思案である。
彼がその家督を継いだ時、きっと答え合わせが出来るだろう。
数えてみれば約一ヶ月程度、だろうか。
そのことに、特に家族は特に難色を示したりしていないし、何なら母さんは偶に二人分のお茶を持ってきてくれたりもする。
しかし、それはそれとして珍しいことでもあった。
宇迦盧邸にある道場は立派だが、特に外部に向けて教室や何かで開けているわけではない。
使用するのは基本的に家族だけという、閉じた場所なのだ。
それが少し、勿体なく感じる時もあった。
昔、その理由を父に尋ねた事がある。確か、共に鍛錬を積んでいた時のこと。
自分よりもずっと綺麗な技や呼吸を扱う当時の父に、道場を広く開けたりしないのか、と。
「お父さんはあまり、教えるのが上手じゃないからなあ……。
司は上達が早かったけど、それは司の才能と努力の賜物だ」
「だからお父さんの代ではこれで良いかな。子に継がせるという役目は果たした」
「でももし、司がやりたいと思うなら。司が家を継いだ時に道場の門戸を開けても良い。
その時はお父さんも司のことを先生って呼ぼうか。将来が楽しみだ。よっ、司先生!」
その時はそのまま、弄られっぱなしで話が終わってしまった。
ただ最近、大学での勉強や神秘との関わりを経て、少し考えることがある。
宇迦盧の家が継いできた、その技の意味を。
曰く。合気道というものの一番古い原型を辿れば、それは所謂"禊行"であるらしい。
穢れを祓い、心身を清め、神と通じるための術。
もし宇迦盧の技に込められた意味もそれだったなら、子の継がせる意味も納得がいく。
道場が"お宮"と同じ建物にある理由も、同様に。
だから、という訳でもないけれど。
彼女には結局、単なる柔軟と体力作り程度しか教えていない。
それ以上が必要になることはないだろうから、多分ずっとこのまま。
けれど同時に、自分がこの行を辞めることも、恐らくない。
これは変わらぬ日々に埋没する、細やかな思案である。
彼がその家督を継いだ時、きっと答え合わせが出来るだろう。