RECORD

Eno.329 九条 陶椛の記録

CROSSROADS




way back道。


三人の帰路On the way home


それぞれの、岐路。─CROSSROADS─



◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


それはほんとうに偶然で。
運悪く/運良く、出逢ってしまった。

黄昏色の庭園で飛び交う妖精たちを
焼き払って始末しているときに
聞き覚えのある声を聞いた。

こちら側アザーサイドに迷い込んでしまった
クラスメイトもかもかその友人めりりん


どうして。


どうして、こんなところに?


見られ、た…?


動揺する気持ちを抑えつけて
二人を連れてその場から離れた。
迷い込んだ一般人の保護も任務であり
なにより、大事な友だちだから。

庭園からそこそこに離れ
ここまで来ればとりあえず大丈夫かなと
なんでもないように笑いかけ
日常の話で気を紛らわせようとした。
いやなこと、こわかったことを
ふたりが思い出さないように。


私のことも、気のせいだとか
見間違いだとかで済ませられないかなと
その時まではうっすら思っていた。

このまま、家まで無事に送れば
なんでもなかったことに出来ないだろうか。
なんでもない、いつもの日常に。
そんな、都合の良いことを。


けれど。


あいつらは追ってきた。
どこから発生したのかはわからないけど
バカみたいな数で。

他の人間たちと違って無力で
扱いやすい、恐れる必要がない
都合の良い狩りやすい獲物エサだとでも
判断したのだろうか。

それが群れから離れてほんの少数で
行動しているのだから狙いもするか。
近くに駆け込める建物も無い。
迂闊だったのは、私だ。


囲まれている。
数え切れないほどの怪奇に。
数えるのも馬鹿馬鹿しくなるほどの。


絶望的な数だ。


自分一人でこんなのどうにかなる
わけがない。どうしようもない。
無理だ。逃げよう。
冷静に正常に判断すれば、そう。
そうだろう。

逃げろ

逃げろ

逃げろ

逃げろ

逃げろ

………

……



黙れ!!

そうじゃない!
……そうじゃないでしょ。

私が、今やることは。
やるべきことは。
やりたい、ことは。

圧倒的な暴力で狩られる側になって
そこで護らないといけない
大切なものを抱える側になって

ようやく

理解わかった。
私が、この力を手にした意味を。
私が、どう使いたかったのかを。


ヒーローものが好きだった。
戦うヒロインに憧れたりした。
それは、私の胸に灯る光だ。

べつに卒業したわけではないし
今も好きで見ているけれど。


お姉のことが好きだ。

インドア派で私がまとわりつくと
めんどくさそうにするけど
なんだかんだで甘やかしてくれる。

昔からずっと、私の面倒を見てくれてた。
おやつを分けるときはダイエット中だとか
なんとか言って、大きいほうを私にくれた。

怒られるときは私の味方でいてくれた。
私が泣くと泣き止むまで黙って傍に居てくれた。

私を、守ってくれていた。
その背中をずっと見ていた。
柔らかな、穏やかな、光。


地方からこちらに越してきたとき
私は、独りだった。
今と違って地味で、少し引っ込み思案で。
新しい環境に馴染めず
友だちも出来ず、塞ぎ込みかけていた。
今思えば、いじめられていたのだと思う。

「キミさー、どうしたのん?」

そんな時、ギャルの先輩が
明るく気さくに声をかけてくれた。
不思議だった。

変な呼び名で呼んでくれた。
いっしょに、遊んでくれた。
いろんなとこに連れていってくれた。
いろんなことを教えてくれた。

「最近よく笑うね、とかぴ。
 なんかいいことあったかー?」

薄暗がりから陽のあたる場所へ
手を取り、連れ出してくれた。

先輩は私にとって、光だった。


いくつもの、光。

私は、誰かを守れる人になりたい。
私を救い、守ってくれた人のように。

私も、なりたい。

光の、ひとつに。


………

……



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とーか [Eno.329] 2025-05-26 19:00:34 No.582432

「……うーわ、多いなー。
 いくら私たちがカワイイからってそんなに
 押し寄せてこられても困るんですよね…っと!」

余裕げに軽口を叩き、怪奇の群れに竦みそうになる足を
無理矢理奮い立たせる。
今、戦えるのは自分ひとり。頼りになる前衛もいない。

(この数は流石に無理かもなー…
 それでも。無理でも、やるしか……ないんだ!
 だから……力を貸してよ。ありったけでいくから!)

応えるように、血腥い風が吹いた。
覚悟を決めた陶椛の両の掌から鬼火が溢れ
暴れるように噴き出し、やがて収束する。

「…燃えてしまえ。燃えて……仕舞えぇェー…ッッ!!」

絶叫めいた咆哮とともに翠色の此の世ならざる炎の槍が
前方へとアンダースローで放たれた。
炎の槍が怪奇の群れを貫き、まとめて焼き払っていく。

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⦅ まったく、あやかし使いの荒い娘だこと⦆

なれ一人ならば飛んで逃げれるのにのう?⦆

(それは無し。いいから力を貸して!
 断っても持ってくかんね!)

そうしてどうにか二人を逃がす道を
こじ開けようとしているうちに
めりりんが戦列に加わってくれた。
レトロな携帯電話を手に構えている。

なにがあったのかはわからない。
なにが出来るのかもわからない。

それでも、一人ではなくなった。
一人で、戦わなくてもよくなった。
それだけで、勝算の無い戦いに
希望が見えた。


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とーか [Eno.329] 2025-05-27 07:51:47 No.635127

シャッター音とともに生じる見えない壁に
阻まれ、挟まれる怪奇たちから距離を取り
鬼火でまとめて焼いて数を減らしていく。

偶然だが、能力的に相性がいい。
今、ここで欲しかった力だった。
そうしてわずかながらも一息つけたことで
背後の空気が変わったことに気づく。

「………もかもか……?」

ふわりと広がる甘い花の香り。
削れて霧散していく怪奇たち。

戦わせて、という声が響く。

………何故。

こんな薄暗がりには無縁だと思っていた。
うららかな春の日差しのような
穏やかな、ふわふわした少女。

そのまま、暖かな場所に居てほしかった。
血腥く危険に満ちたこちら側には
関わってほしくなんてなかった。

なにも知らないまま日常を過ごしていて
ほしかった。その日常を守りたかった。

私のこんな姿も見られたくはなかった。
見せるつもりもなかった。
どう、思われただろうか。

私はただ “カワイイとーかちゃん” のまま
あなたの隣で明るく楽しくいつものように
演じていたかった。

でも、もう遅い。
昨日には戻れない。
既に一線は越えられてしまった。

私はここで止めるべきなのかもしれない。
お兄さんには、きっと怒られるだろう。
私がいたのに、こんなことになって。


芟花萌花。


もかもか。

1-2のクラスメイト。
私の大切なカワイイ友だち。
見た目も中身もふわふわしてるけど
芯はけっこうしっかりしてるんだ。


その友だちが、やると決めた。
自分でやると、そう決めたんだ。

なら、私に出来ることは。
友だちとして。九条 陶椛として
ここでやるべきことは───


「………うん。やるよ。やろう、3人で。
 束高1年の力、見せつけてやろうよ!」

心は決まった。
すぅ、と息を整える。

「めりりんは前衛をお願い!
 敵を引きつけて足止めしといて!
 そこを私がまとめてぶっ叩くから。
 …無理はしないでね」

「もかもかは私たちのサポート!
 撃ちもらしも潰しておいて。
 ……いい? 出来るよね」

───帰るんだ。3人で、力を合わせて。

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--- [Eno.107] 2025-05-27 17:18:14 No.665471

みるみると、怪奇たちの数は減っている。
それが如実にわかる頃、退路の先に、光が見えた。

黄昏世界の境界線。
裏と表を繋ぐ場所。

彼女たちの帰るべき場所の入口が、
ぽっかりと口を開けていた。

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とーか [Eno.329] 2025-05-27 18:51:27 No.671408

「よし! じゃあ、道をこじあけるから
 飛び込もう! 向こうまではあいつらも
 追ってこれないから!」

希望が見えた。
あとは道を切り拓くだけだ。

「私がデカいの撃ったら
 それに続いて二人は全力で走って!」

鬼火を練り上げ、威力を上げていく。
今日はもう、これで打ち止めだろう。

「いい? いくよ、3…2…1ッ!」

カウントダウンのおわりとともに
鬼火の槍が放たれる。
唸りを上げて回転しながら直進していく。
常よりも速度は遅めに調整され
削り進むように道をこじ開けていった。

「…走れ! 走れ…ッ!!」

二人の後を陶椛が駆けていく。

槍は出口近くになるにつれ薄れていき
裂かれるように消えていった。

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……………

…………

………

……






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お借りして"Special Thanks"います

・芟花 萌花(107)
https://wdrb.work/otherside/record.php?id=2471

・七未 めりい(154)
https://wdrb.work/otherside/record.php?id=2440