RECORD

Eno.662 辰森 ユキの記録

ある日の会話3

「えーっと……つまり、僕に会いたいって?」



否、相対だ。

和気藹々とした娘の温泉報告会はその話になった途端、様相を一変させた。
所謂『娘さんを僕に下さい』イベント。いつか来ると覚悟はしていたが、思ったよりもだいぶ早い。
ユキがまともな養育を受け始めて5年、それから世の中に出てまだ2ヶ月である。

見た目が格段に大人びているので忘れがちだが、言うなれば今のユキは5+α歳児と言った所。
同僚や仲間を巻き込んで様々な教育を熱心に施したが、10年の断絶と空白を埋めるのは容易ではなかった。
詰め込んだ知識がそれをある程度補っているが、情緒面ではまだまだ成熟とは程遠い。

これが普通のご家庭であれば、悪い男にころっと騙されているのでは?と疑ってあれこれ気を揉んで、子供に煙たがられる所だ。
しかし特殊なご家庭なので、自分の立場をフル活用して相手の素性を把握し、問題ないと判断した。
何より娘が望み、相手がそれに応えたのだから、文句はない。
……いやまあ実際敵役ではあったし、悪い男というのは当てはまらない事もないかも知れない。
他にも思う所はある。

だって公式が解釈違い一歩手前……!!
大総統との最後の遣り取りを思えば、こういった考えに至るのは分からないでもない。
でもストレンジャーは一応子供向けなんですよ!こうして大人も大変楽しませて頂いてますけど!!
それを追加戦士がそんなふしだらな……あぁでも別に遊ぶつもりでそうしてる訳じゃないなら良い……のか?
いや、むしろ真剣にそうしてる方が質が悪いんじゃあないか……?
でも元々敵役だからな……?
やっぱりこういうスピンオフって考えるべきか……
……それともう一人の子はどう考えてるんだろう?
そこはまあ、僕が気にしても仕方がないのだけれど。





……ぁさん?お母さん?」



どうやら一瞬思考が袋小路で高速回転していたらしい。
コウは我に返ると、なんとも言えない難しい顔を揉んで解きほぐして、娘に微笑みかける。

「あぁごめんごめん大丈夫。日取りはこの日が空いてるから……場所ぉ……どうしようか」

壁にかけたカレンダーを指さしながら考える。
普通、こういう時は家に呼ぶものだろうか。レストランとかセッティングする事もあるか。
平和的に解決するほうが、ユキは安心だろう。

……しかしこう、やっぱり父親の兼役としては一発ぶん殴るのが筋ってもんじゃあないか?
とすると荒事に向かない場所は良くないが……真の姿を封じるには有効だ。
でもあのスタッグシザーズと一戦交えるって考えたらちょっとワクワクしてしまうじゃあないか。



「……裏なら私も少しは治療出来ますから」



再び我に返る母。

「あぁ、うん……有難う、出来た娘で私は嬉しいよ」



一先ず闘争心は脇へ追いやり、ちょっと背伸びして可愛い娘の頭を撫でる母であった。