RECORD

Eno.1045 宮代 京子の記録

ある日の記憶 - 昔の私の思い出

最近、私の北摩ここに来る前の思い出を聞かれたことがあった。
正直に言って、ここに飛ばされる前の私の思い出は平凡だ。

普通の家庭に生まれ、普通に生活をして、普通な毎日を
送っていた。くどい位に普通だけど、楽しかった毎日。
優しかった両親。
数は多いとは言えなかったけど、面白い友人たち。

そんな私の平凡な日常は、一瞬にして非日常になった。
当初の私はそんな非日常がとても怖くて、ひたすらに元の世界に帰りたかった。
だけど今は毎日が楽しくて、こっちの生活もかけがえのない大切なものになっている。

「―――ここに来る前の思い出かぁ……何から話そうかな?」

学校から家に帰って、一通りの事を済ませた夜。
私は机の前でぼんやりと昔の事を考える。
最初の話題は……やっぱりお父さんとお母さんの事からかな。

ちょっとまじめすぎる位だけど、すごく頼もしかったお父さん。
ちょっとおっとりしている所もあるけど、優しかったお母さん。
私は両親の事を思い出して少しだけ温かい気持ちになる。
二人ともどうしてるかなぁ……
そんな事を考えて、私は二人の顔を思い浮かべる。


―――あれ?
                  
    ⋯⋯⋯⋯え? え!?  

      ⋯⋯無い、ない、 い!!!



⋯⋯嘘。何も思い出せない。
お父さんの顔も。お母さんの顔も。
記憶の中の二人の顔はモヤがかかってて。
思い出せば思い出そうとするほど、水に絵の具を垂らしたみたいにグニャグニャしてきて。
最後にはとうとう顔だけじゃなくて、二人との思い出すらあやふやになってきた。

そんなはずない。なんだか気持ち悪い。
それに思い出そうとしているうちに頭も重くなってきてお腹の辺りもグルグルと渦を巻いたような感覚になっていく。

何で?どうして?ドウシテ―――?

⋯⋯⋯⋯疲れてる。
そうだ。私は疲れてるんだ。
だって、両親の顔が思い出せないなんて普通じゃない。
今日は色々な事があったから、風邪でも引いて頭がぼんやりしてるのかもしれない。
震えも止まらないし……そう、きっとそうなんだ。そうに違いないそうであってほしいそうでなければならない
そうで―――

「…………今日はもう寝よう……早く風邪……治さなきゃ……

フラフラとした足取りで私はベッドに向かう。

そして横になって毛布に包まると、私の意識はいつの間にか深く沈んでいった⋯⋯

朝。ぱちりと目が覚める。
目は冴えていて頭も軽い。
昨日の気持ち悪さも嘘みたいに消えている。
ほら、やっぱり風邪だったんだ。
早めに寝てよかった……
だけど、私は昨日の事を思い出さなかった。
……違う。思い出したくなかった。

―――思い出したら、全部壊れてしまう気がしたから。