RECORD

Eno.270 猫の記録

子猫の記録22

夜の遅い時間、帰り道。
手を繋いで帰っていました。

「ねえ、やよい。ひとつだけきいてもいい?」



「んー?なぁに?」



貰ったクッキーの包みを開けながら、一つその人に差し出して。
自分も一口。

「やよいは、だれをみてるの?」



言葉が返ってくるまで、時間が少しありました。

「だれかしら」



そういうその人の顔を見ることが出来ませんでした。

「皆の事もみているし、きっと。もういない人の事も見てる」


「自分の関係者だけじゃないわ。忽戸の妹の三日もね。お話出来たら違ったんだろうなって」



猫は俯きました。
きっと、皆に自分は含まれているのだろうけれど。

「でもね、貴方の事もみているわよ、かこ」


猫座お星さまが願いを叶えてくれたのだから」



「…確かに、貴方をいろんな子と重ねてしまう事はあるかもしれないけれど、貴方は貴方。大事な子ですから」



願われたのは理解者でした。
けれど、それは。
自分の過去を知ってほしいわけでも、同情してほしいわけでも
失われてしまった人たちを取り戻したいのではなく、
一緒に失われてしまった人たちを覚えていてくれる人を――。


猫は瞬きをしました。
これはきっと。手を繋ぐそのひとの心なのだろうと。
猫も、その人も言葉にはしませんでしたが。
その表情は少しだけ優しいものなのでした。