RECORD
Eno.77 磯向井 利慕の記録

父方の親族に会ったこともないから、どんな家だったのかは分からない。
ただ、自分と母が数多く引っ越し出来るくらいには資産を貯めており、相応に裕福な家だったのではないかと想像する。兄弟が居たのか、祖父祖母がどうしているか。知る由もなく。

外装のネジを外して、中を開ける。当然、自分に向けたメッセージが残されている事はなく、乱暴に扱って取れた部品が端に集まっている。

いつ作ったのかも分からないお手製ラジオなのだから。
タイムカプセルの様に当時の何かが残っていたら良いと思ってたが、期待外れだった。取れた部品の方を見て、おおよそどのくらい前に作られたかを見れるだけである。
修理する気になったのなんて、得に理由はなくて。課題もレポートも終わって時間があいたから。
たまたま趣味に手を付ける物も無くて、SURFの通知にクレーさんの文字が見えたから。
嫌になってくる。

中身を見る。痕跡を辿って、意図を読み取る。
大嫌いさ。
酷く憎くて、自分と母の人生全部を歪ませた元凶。
何処にも居ない。
少なくとも、空にはいなかった。
海にも居るわけが無いと思っても、何処か期待している自分がいる。
たまにする頭痛はただの後遺症で。
胸がつっかえるような感じは、ただの苦しみで。
なのに自分が父親と同じ物を見ていると言うことが、妙に心地良い。
部品を取り替えて、ハンダでつけ直す。電源を入れてアンテナを持ち上げる。

ザーザーと響く雑音。チャンネルを合わせていけば、声が聞こえた。
なんてことない、オールナイトのラジオ。出演者が段々変なテンションになって、下ネタが飛び交っていく。

出来た喜びを上回るくらい、聞こえてきた話がおかしくて鼻で笑う。
細いアンテナを窓辺に向けて、サッシに引っ掛ける。
後は茫然と。どうにか盛り上げようと必死になっている出演者の話を、聞き続けた。
❖回顧録

端に『トウショ』と書かれている。
父方の親族に会ったこともないから、どんな家だったのかは分からない。
ただ、自分と母が数多く引っ越し出来るくらいには資産を貯めており、相応に裕福な家だったのではないかと想像する。兄弟が居たのか、祖父祖母がどうしているか。知る由もなく。

「…………」
外装のネジを外して、中を開ける。当然、自分に向けたメッセージが残されている事はなく、乱暴に扱って取れた部品が端に集まっている。

「……そりゃ、そうだよな」
いつ作ったのかも分からないお手製ラジオなのだから。
タイムカプセルの様に当時の何かが残っていたら良いと思ってたが、期待外れだった。取れた部品の方を見て、おおよそどのくらい前に作られたかを見れるだけである。
修理する気になったのなんて、得に理由はなくて。課題もレポートも終わって時間があいたから。
たまたま趣味に手を付ける物も無くて、SURFの通知にクレーさんの文字が見えたから。
嫌になってくる。

「で、何が外れてたんだか」
中身を見る。痕跡を辿って、意図を読み取る。
大嫌いさ。
酷く憎くて、自分と母の人生全部を歪ませた元凶。
何処にも居ない。
少なくとも、空にはいなかった。
海にも居るわけが無いと思っても、何処か期待している自分がいる。
たまにする頭痛はただの後遺症で。
胸がつっかえるような感じは、ただの苦しみで。
なのに自分が父親と同じ物を見ていると言うことが、妙に心地良い。
部品を取り替えて、ハンダでつけ直す。電源を入れてアンテナを持ち上げる。

「こんなんで入るのか……?」
ザーザーと響く雑音。チャンネルを合わせていけば、声が聞こえた。
なんてことない、オールナイトのラジオ。出演者が段々変なテンションになって、下ネタが飛び交っていく。

「………ふっ くだらな」
出来た喜びを上回るくらい、聞こえてきた話がおかしくて鼻で笑う。
細いアンテナを窓辺に向けて、サッシに引っ掛ける。
後は茫然と。どうにか盛り上げようと必死になっている出演者の話を、聞き続けた。