RECORD

Eno.106 芟花艾の記録

𝘼𝙣𝙙 𝙨𝙤, 𝙄 𝙒𝙖𝙣𝙙𝙚𝙧𝙚𝙙 𝙄𝙣𝙩𝙤 𝘼𝙣𝙤𝙩𝙝𝙚𝙧 𝙒𝙤𝙧𝙡𝙙

からっと青い空も暮相に染まり始める。そんな時間だった。

先程まで聞こえていたような鳥の鳴き声もぴたりと静まり、気付けばすぐそこに古びた神社があった。
腕を目いっぱい伸ばせば手の届きそうな小さな神明鳥居。
手水舎もなく短な参道には葉が散らばり、賽銭箱代わりに置かれた皿には雨水が溜まって、本殿もそれは荒れていた。
人の手が加わらなくなって長いんだろう。北摩にもこういう場所があるんだなと思った。
科学が進んで信仰が薄れた結果なのかな。道徳としてこういう場所も大事に保つところだと思っていたのだけど。

「ということは、相当奥に来ちゃったのかな」

夢中で歩いてたらこれだ……。
帰り道を探していたら日もすっかり暮れそうだが、なんとなく、挨拶だけしてこの場を立ち去る気にもなれなかった。
簡単に掃除くらい、していこうか。
なんかご利益あるかも知れないしね。



枯れ葉を集め、低木周りの雑草を抜き、蜘蛛の巣を払い。
集めたゴミは鞄の中でくしゃくしゃになってたコンビニ袋にまとめて。
賽銭皿の雨水を流して袖で拭えば、どろどろになった自分とは反対に神社も少しこざっぱりして見えた。
誰にも目を掛けられない、荒れ放題の社よりは、神様も喜んでくれるんじゃないかな。

ことんと置いた皿に5円をひとつ、供えて二度頭を下げて手を叩く。



「 萌花の体質がよくなりますように 」



随分時間のかかったように思うが神社を出る頃にはまだまだ空は薄茜色で、
けれども見慣れた街につく頃にはがらりと、夜に覆われてた。

2年程前の話。