RECORD

Eno.414 水貝 弥白の記録

通話の記録

夜、着信が来る。家族からの着信は若干緊張するが
今日もいつもの時間だから大丈夫。一呼吸してから通話にスワイプして

「もしもーし、わざわざ学校の無い時間に掛けなくったっていいんだけど」

『そうも行かないでしょ、弥白から連絡がないんだから。
 仕送りは足りてる?節約で食事を抜いたりしてないよね。

 やっちゃーーん!!

スピーカー通話なのか弟の声も混じって聞こえる。
張った声から感じられる活力を確かめながら、

「してないしてない。明日は友達や先輩に声かけられてBBQ行くんだ。
 あとこっちで美味しいカレーの店も見つけてさ。ケーキバイキングも
 行ったけど思ったより入らないもんだって。曙乃も聞いてんだろ?
 やっちゃんこっちも楽しいから夏休みは家に帰れないかもな~」

だー!!!いつ帰ってくるのー!?

 ほら弥白が帰って来るの楽しみにしてるんだから…そういうこと言わないの。
 曙乃もスピーカーの前で大きな声出さないで、やっちゃんびっくりするでしょ。
 そっちではお店巡りもできてるんだ、東京の大学生だものね。
 楽しいこと、色々あるでしょ?私も最初の頃なんて特に入り用が多くて…
 そうだ、お金は足りてる?大丈夫?』

俺がこっちでの生活を聞くと明らかに調子が良さそうなので、当たり障りの無い範囲で答える。
本当にこういう生活が好きだったんだなあ、母さん。

「学食が安いからあんま困ってないけど、魚が高くて食えないくらいかなー」

『魚じゃ足りなくなるでしょ、無理に食べなくてもね
 その分お肉か豆腐と野菜をしっかり取ればいいから。
 お米はまた送るからちゃんと受け取りなさいよ』

差し障りのない悩みを伝えながら通話を終える。
元気がないよりはあった方が良いし、余計な心配をさせても仕方ないから。

こっちでの楽しかったこと…本当に楽しいんだけど、
こういうことに使うとちょっと罪悪感というか、
あの時楽しかった記憶に染みがつくみたいでなんだかな。