RECORD
Eno.607 黒村かすれの記録
異世界という存在を知った時、
自分の心中にあったのは……果たしてなんだったか。
歓喜だったか恐怖だったか。
もう思い出せない。忘れるようにしてしまった。
飛べるようになってから強烈な錯覚を感じるようになった。
どの世界で何をしていても、己が箱庭の中に落とされたちっぽけな駒でしかない感覚に陥る。
周りも含めてだ。
究極の外様であり、
取るに足らない存在であり、
今すぐこの場で消え去ったとて、
何の影響も無いように思える。自分が無意味に思える。
それは全くその通りであり、そうであるべきとさえ言える。
忍びとは真実そのような存在だし、異世界人なら尚更である。
離人症のような感覚に陥るのは門潜の法の副作用なのかもしれない。
耐えて、堪えて、血の滲むような研鑽を積んできた技でさえも、
圧倒的な虚脱感の前には無価値に思えた。
だが、恐らくはそうではない。
そうではないのだと、信じたい。
塗り固められた記憶と人格の内で叫んでいる何かがある。
それは一欠片の意地か、矜持か。その両方か。
己の世界を維持できるのは、それのおかげだ。
それを喪った時、おそらく自分はこの世の何処にもいなくなるのだろう。
渡航記録5
異世界という存在を知った時、
自分の心中にあったのは……果たしてなんだったか。
歓喜だったか恐怖だったか。
もう思い出せない。忘れるようにしてしまった。
飛べるようになってから強烈な錯覚を感じるようになった。
どの世界で何をしていても、己が箱庭の中に落とされたちっぽけな駒でしかない感覚に陥る。
周りも含めてだ。
究極の外様であり、
取るに足らない存在であり、
今すぐこの場で消え去ったとて、
何の影響も無いように思える。自分が無意味に思える。
それは全くその通りであり、そうであるべきとさえ言える。
忍びとは真実そのような存在だし、異世界人なら尚更である。
離人症のような感覚に陥るのは門潜の法の副作用なのかもしれない。
耐えて、堪えて、血の滲むような研鑽を積んできた技でさえも、
圧倒的な虚脱感の前には無価値に思えた。
だが、恐らくはそうではない。
そうではないのだと、信じたい。
塗り固められた記憶と人格の内で叫んでいる何かがある。
それは一欠片の意地か、矜持か。その両方か。
己の世界を維持できるのは、それのおかげだ。
それを喪った時、おそらく自分はこの世の何処にもいなくなるのだろう。