RECORD

Eno.242 栗花落 浅葱の記録

01:でかくて頭のいい男の先輩

 ソラを目指す人の話を聞いた。
 その人は大きくて、面白くて、態度が悪くて、頭が良さそうだった。
 きっと僕よりも頭が良いのだろうなと、僕はそう思う。

 ああ、けれど。
 その人はいったい、宙のどこまで飛べるのだろう。
 ツィオルコフスキーの天への梯子軌道エレベーターさえ通っていないこの世界で。

 多段式の固体燃料ロケットで大気の海を天蓋へと泳ぎ昇り、
 空になったロケットを次々に分離廃棄していって、身軽に真空へ身投げして、
 ペイロードのほとんどを費やした液体燃料を燃やして、どこまでいけるのだろう。
 
 地球は人類の揺り籠で、僕らは今もその大気という羊水の中を揺蕩っている。
 そんな人類の中でも揺り籠の中から這い上がろうとしている、そんな人なのかもしれない。
 それはそれは、とても素敵で幻想的で、お星さまみたいにキラキラとした夢なのだろう。

 僕はそのキラキラとした夢を包み込む、暗黒の森林が大好きだ・・・・・・・・・・
 その人はどんな捉え方で宙を見ているんだろう、僕はそれが楽しみだ。
 光さえもが亀の如く鈍足な、残酷な宇宙の広さを、どんな色をした眼鏡で見ているのだろう。



―――ああ、僕はそれが観測たい。