RECORD

Eno.96 加瀬秋日佐の記録

7月第2週


甘い匂いの中、夕暮れを行く。
時折夜闇を恋しく思えども、こちらは橙の光景ばかり。

己に染み付いた匂いが、少しばかり不快を誘った。
酒精に思考の泥が滲み出していた。

あちらを蓋すりゃこちらが開く。
こちらを抑えりゃそちらが綻ぶ。
今の己はどこに傾いている?
この足が沈んだのは何処だ?

勿論。足掻くとも。藻掻くとも。
正しい向き先が知れないだけで。
手にしたそれが境界のいずれにあるのか、
少しずつ分からなくなりつつあるだけで。


知らぬ、分からぬのであれば。
進もう。行こう。行こう。
それ以外に何がある。

誰も呼んじゃいない。
誰も呼んじゃいない?
ならばこれは、何。


つまるところ、知らぬものがまた増えて。
それでも止まる術を持たぬということだ。

幸いにもなすべきことは変わらない。
少しだけややこしい物が増えただけ。
いつも通りじゃないか。