RECORD
Eno.1451 西ヶ谷 鏡人の記録
前だけを見て進め
帰宅後、直ぐに机に座り、引き出しの中を漁る。
一週間前の辰星祭の短冊ワークショップ。
カガミヤレジデンスの笹に飾った願いとは別に、
不意に湧いた一時の衝動で書いてしまった白い短冊。
「………」
誰にも気がつかれないように、極限まで小さくしたためたらしきその願いを眺める。
…俺には、昔から自分に自信がなかった。
周りの奴らは、どいつもこいつも俺より優秀で、どんなに努力しようと追いつけないことが明白だった。
今に至るまでオカルトに傾倒し始めた理由までは、昔のこと過ぎて流石に覚えていない。
当時の自分の心境を今、冷静に改めて振り返るに、『不思議な事象』による力を信じることで、そしてそれに縋ることで不甲斐ない自分を変えて欲しい、とでも願ったのだろうか。
…笑える話だ。神頼みは趣味じゃないとか言ってた少し前の自分が馬鹿みたいだ。むしろ良く宗教の類に引っかからなかったな。
この願いもそうだ。
『大学で入って勉強して、オカルトサークルで活動して、住居の知り合いとバカ騒ぎして。
待望の『不思議な力』も手に入れて、摩訶不思議な現象に次々と遭遇できて』
『その程度で、お前の劣等感はぬぐわれるのか?』
心の深い所から、俺を責める声が聞こえた気がした。
気がついた時には既に書かれて飾ってしまっていた。
『今世にもう期待するな』。
極小サイズの文字から、そんな俺の諦めの声が聞こえた気がした。
なんとか外して持ち帰るのが限界だった。
引き出しの奥に短冊を押し込んだ。
俺は全力で見ないふりをした。なかったことにした。
お陰で今週の平日は散々だった。教授の機嫌を損ねるわ、課題の記入ミスを多発させるわ。
一応学業面では真面目で通ってる自分なら普段しないようなミスを重ねてしまってた。
…あの出来事がなければ、今の俺はこの絶望を抱えたまま生きていたかもしれない。
俺がエントランスにいなければ。彼女が人との関係で気疲れしていなければ。
彼女の昔話を聞くことになったのは、今までの交流と色んな偶然が重なっただけだ。
俺は彼女を何とか励まそうとしたけど、救われたのはむしろ俺の方だった。全く、情けない。
短冊を両手で摘まみ、力を籠める。
俺のバカみたいな願いは、いともたやすく細切れになった。
最新のオカルトノートを開く。最終ページの最後の行に、しっかりと書き記す。
『好きな人が出来た。俺と相互理解を深めてくれた彼女を、俺は絶対に裏切らない。』
この気持ちが最終的にどうなるかは、今の俺には分からない。
それでも、この思いを忘れなければ、俺はこれから何があっても前を見て進める気がする。
一週間前の辰星祭の短冊ワークショップ。
カガミヤレジデンスの笹に飾った願いとは別に、
不意に湧いた一時の衝動で書いてしまった白い短冊。
「………」
誰にも気がつかれないように、極限まで小さくしたためたらしきその願いを眺める。
…俺には、昔から自分に自信がなかった。
周りの奴らは、どいつもこいつも俺より優秀で、どんなに努力しようと追いつけないことが明白だった。
今に至るまでオカルトに傾倒し始めた理由までは、昔のこと過ぎて流石に覚えていない。
当時の自分の心境を今、冷静に改めて振り返るに、『不思議な事象』による力を信じることで、そしてそれに縋ることで不甲斐ない自分を変えて欲しい、とでも願ったのだろうか。
…笑える話だ。神頼みは趣味じゃないとか言ってた少し前の自分が馬鹿みたいだ。むしろ良く宗教の類に引っかからなかったな。
この願いもそうだ。
『大学で入って勉強して、オカルトサークルで活動して、住居の知り合いとバカ騒ぎして。
待望の『不思議な力』も手に入れて、摩訶不思議な現象に次々と遭遇できて』
『その程度で、お前の劣等感はぬぐわれるのか?』
心の深い所から、俺を責める声が聞こえた気がした。
気がついた時には既に書かれて飾ってしまっていた。
『今世にもう期待するな』。
極小サイズの文字から、そんな俺の諦めの声が聞こえた気がした。
なんとか外して持ち帰るのが限界だった。
引き出しの奥に短冊を押し込んだ。
俺は全力で見ないふりをした。なかったことにした。
お陰で今週の平日は散々だった。教授の機嫌を損ねるわ、課題の記入ミスを多発させるわ。
一応学業面では真面目で通ってる自分なら普段しないようなミスを重ねてしまってた。
…あの出来事がなければ、今の俺はこの絶望を抱えたまま生きていたかもしれない。
俺がエントランスにいなければ。彼女が人との関係で気疲れしていなければ。
彼女の昔話を聞くことになったのは、今までの交流と色んな偶然が重なっただけだ。
俺は彼女を何とか励まそうとしたけど、救われたのはむしろ俺の方だった。全く、情けない。
短冊を両手で摘まみ、力を籠める。
俺のバカみたいな願いは、いともたやすく細切れになった。
最新のオカルトノートを開く。最終ページの最後の行に、しっかりと書き記す。
『好きな人が出来た。俺と相互理解を深めてくれた彼女を、俺は絶対に裏切らない。』
この気持ちが最終的にどうなるかは、今の俺には分からない。
それでも、この思いを忘れなければ、俺はこれから何があっても前を見て進める気がする。
