RECORD

Eno.427 大狼拾希の記録

0/6:経過観察

そっとリストバンドを外す。
腕の外側に大きめの絆創膏。
内側だと少し意味合いが変わってしまうから外側につけた痕。

剥がすと小さな切り傷が瘡蓋になって残っている。

水曜に自分でつけた傷だ。
リセットがくれば跡形もなく消える傷。
瘡蓋自体を見たのが本当に久しぶりな気すらしている。
存在を知っていても、そうなる前にほぼ全ての傷は無くなってきていた。今までは。

七夕の夜からリセットが起こらなくなっている。

1日2日ない事はあったが、1週間続いたのは今回が初めてだ。

異能が消えた…?

或いは何かしらの力が働いて、七夕での願いが叶ったのだろうか。
もしかしたら、OCも消えて何の神秘も持たない普通の人間になるという未来もあるのかもしれない。

今までに感じたことの無い眠気の中で薄ぼんやりと考える。
願ったり叶ったりじゃないか?
そう思うと同時に、普通になった自身というものに対してどう向き合って良いのか、想像がつかないのも事実だった。

標識もあれから見ていない。

二つの標識も、リセットに関わる何かだったのなら、もう見る事もないということだ。

元々不可解だったものが不可解なまま消えるだけだ。何も気にすることでは無い。
そう割り切ってしまえれば、もしこのままリセットが2度と起こらなくなったとしても、気楽に過ごせていける筈なのだ。

しかし、今まで感じたことの無いようなどうしようもない小さな不安が心の片隅に居座っているのも事実。

いくつかの顔が浮かぶ。

自分はそれらとどう向かい合えば良いのか。
そういった事も含めて、何か大きな分岐点に立っているような漠然とした不安が渦巻いている。
しかし渦巻くそれも、微睡の中に消えて行く。
寝不足という感覚も慣れなかったけど、存外悪くないじゃないか。
そんなどうしようもないことを考えながら、今はただ意識を閉じる事にした。